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3 ヒアリング調査からみた活動実態と支援ニーズ
 ここでは、藤枝市において、まちづくりに関する取り組みを行っている主要な市民団体(17団体)に対するヒアリング結果をもとに、団体の特徴、市民団体からみた行政との関係、活動上における課題・支援ニーズなどについて、その概要をまとめる。
(1)組織および会員の特徴
 
ア 設立の経緯と特徴
 団体の設立には、大きく分けると行政主導・支援で発足する場合と、自主的に発足する場合の2種類のパターンがある。
 行政主導・支援により発足した団体の多くは、“国体開催時の会場美化”や“中心市街地活性化のため”といった行政課題対応のため、あるいは、“市長・市役所の発案’’など、市の施策実施のための団体として設立される場合が多く、これらの団体の活動は、災害・地域づくり・環境(緑化など)などの分野に多くみられる。
 一方、自主的に発足した団体は、“気運の盛り上がり”や‘‘目的を達成するため”などの理由により設立されており、その活動分野は、福祉・教育・環境(自然保護)といった自分たちの生活に近接した分野が中心となっている。
 そのため、総じて、自主的に発足した団体の方が組織として活力があり、活動に対する意識レベルが高くなっている。
 
イ 会員の特徴
 まず、積極的な活動を行っている団体の多くは、県や市が実施しているボランティア養成講座などの受講者や保健委員など専門知識・技術を持った人が多く参加している。特に、福祉分野で活動している団体ではその傾向が顕著であり、団体設立以前から活動に取り組んでいる経験者なども数多く参加している。
 次に、地域づくりに関心の高い(自治意識の高い)新市民が旧市民と融合しながら託児ボランティア活動などに取り組んでいる団体がみられたことは、藤枝市の市民団体の特徴として指摘しておく必要があろう。このような団体は、既存の地縁団体とも友好的な関係を築いているため、地域において幅広い活動を行うことが可能となっている。
 ヒアリングを行った団体に総じて言えることは、意識の高い女性が中心となって活躍していることである。これらの団体は、自分たちの団体の使命達成に向けて活動しているとともに、女性の社会進出二一ズに適格に対応している団体であり、藤枝市の地域づくりの一翼を担う団体として位置づけ、支援していくことが望まれる。
 ヒアリングを実施した市民団体の特徴をまとめると、次の表のようになる。
図表3−58 市民団体の特徴(タイプ別)
設立の経緯 分野 主な担い手 活動の特徴 行政との関係・協働 課題・ニーズ
市民主体型 子育て 主婦 活発 イベントの趣旨によって、交渉する部署を選択 設備・機具の整備
福祉 専門知識を有する人     資金援助
自然保護 専門知識を有する人      
行政支援型 男女共同
参画
主婦 活発、学習的
政策提言も
市長との意見疎通良好。市民主体で行政支援 側面支援に満足
消費生活
、環境
主婦 活発、学習的 上位下達的、徐々に市から自立活動を市が取上げ、全市に展開 独立した拠点
福祉 青年     活動場所
まちづくり 藤枝商工会議所関係者   密接  
スポーツ 専門技能を有する人   地域スポーツのあり方を市と一緒に考えたい  
中間型 子育て   全市をカバー 密接 人的支援
食生活 主婦 全市をカバー
活発、学習的
密接
行政が自立を促している
人的支援
設備・機具の整備
行政主導型 災害救助 専門知識を有する人      
地域づくり 地元住民 不活発    
福祉 在宅介護をしている介護者     ボランティアによる支援
美化 専門知識を有する人 全市をカバー 市から依頼されることが多い 資金援助
緑化 専門家集団   完全な市主導型で全ての活動が動かされている 資金援助
出典:ヒアリングより作成
 なお、市内の地縁団体及びテーマ型団体を整理したものが、以下の表である。
 各分野において、全市レベル、地区レベルで多様な団体が存在し、また、多様な活動が展開されていることがわかる。
図表3−59 分野別の地縁団体・テーマ型団体など
分野 地縁団体など 主な市民団体
全市レベル 地区レベル
保健・
福祉・
医療
保健委員連絡協議会、社会福祉協議会、農協 地区社会福祉協議会 やすらぎの会、病院ボランティア、しゃもじの会、藤枝市介護者ぬくもりの会、どるふぃん、NOPおのころ島、NPO光文庫、シルバー人材センター、老人クラブ
社会教育 社会福祉協議会 地区社会福祉協議会 花の会、PTA、ボランティア連絡協議会、消費者推進協議会、藤枝市文化協会、映画振興会
まちづくり   自治会、
町内会
青年会議所、瀬戸谷フォーラム、シルバー人材センター、保勝会、緑をすすめる会、藤を育てる会
文化・
芸術・
スポーツ
自治会連合会   藤枝市文化協会、映画振興会、サッカーのまち藤枝市民会議
環境保全 環境衛生自治推進教会   カワバタモロコを保護する会、緑化協同組合、藤枝市環境保全協議会、消費者推進協議会
災害救援 自治会連合会 自主防災組織 災害ボランティア連絡会
男女共同
参画
自治会連合会 自治会、
町内会
ふじえだ女性の会
子供の健全
育成
子供会世話人連絡会 自治会、
町内会
NPO静岡県教育フォーラム、藤枝託児ボランティア・サークル
出典:ヒアリングより作成
(2) 活動の特徴
 市民団体の活動の特徴としては、“栄養教室・料理教室”や“独居高齢者への給食サービス”など、食生活に関連した健康づくり活動や高齢者・障害者福祉活動といった、地域のニーズに合わせた取り組みを実施している団体に活力、成長性がみられる。また、従来、家族で対応していた“イベント時の託児サポート”や“介護者のケア”などを肩代わりする活動が比較的多いことも特徴として指摘できる。
 先駆的な活動としては、“ごみの減量化”や“不登校の子供たちへの心理カウンセリング”など、新たな地域課題に対し行政に先んじて取り組む団体もみられる。そのため、藤枝市では、今後このような団体と積極的な連携を図るとともに、新たな関係を構築することが急務となろう。
 全般的な特徴として、積極的、精力的に取り組んでいる市民団体は、種々の団体とよい人間関係を構築し、組織のネットワークを拡大していることがあげられる。このことは、市民団体が地縁団体とも地域行事で助け合うなど、友好的な関係を構築しているとともに、その活動は、地縁団体の活動と重複したり、妨げたりするものではないと言えるであろう。
(3) 行政との関係・協働の現状
 ここでも、積極的かつ精力的に取り組んでいる市民団体では、“県や市からの依頼によりセミナーを開催している”、“活動分野において市と協力して事業を実施している”など、市民団体と行政との協働が既に展開されており、パートナーシップに近い態勢が構築されつつある。
 なお、このような団体からは、“無理な要望は避け、できる限りのことは自分たちで行う”といった自主性・自立性に富んだ意見も出されている。このような意識の高さが、活動の発展・組織の成長につながっているものと思われ、住民自治やパートナーシップの構築のためには必要不可欠な素地であるといえる。
 また、市民団体同士でも“バザーの共同実施”や“古着の共同回収”といった事業を共同で行うなど、団体間の連携の素地が芽生えつつある。さらに、このような共同事業を実施したいという、ネットワークの構築を望む声も多数聞かれることから、行政のコーディネーションの必要性が指摘できる。
(4) 市民団体の抱える課題
ヒアリングを実施した市民団体が抱えている問題点・課題をまとめると、以下のとおりに整理できる。ただし、これらは一部の団体の問題点・課題であり、すべての団体にとって共通の問題点はあまり見られなかった。
 
ア 組織・運営
主な意見は、以下のとおりである。
・ 組織の発展は、トップのリーダーシップによるところが大きく、リーダーの育成、確保が急務である。
・ 運営スタッフ(後継者)が不足しており、活動を発展する、新たな事業を実施することが困難である。
・ 活動が地域(市民)に十分に理解、認知されておらず、活動において支障のでることがある。
 例:「有償ボランティア」ということに抵抗を感じる市民(受益者)が多い、など。
・ 活動を拡大するためには、行政との信頼関係を構築し、事業の委託や活動のPRを促進してもらう必要がある。
 (行政職員が市民団体の活動、存在を知らないことも起因している)
 上記のような意見を大別すると、「人材」と「情報」という括りで分けることができる。
「人材」面では、人の確保とリーダーの育成・確保が組織を維持する、運営を継続するためには、重要な要素となっていることがわかる。
 また、「情報」面では、市民団体が新しい組織形態のため、行政や市民に十分知られていない、理解されていないことが大きな要因となっていることがわかる。
 
イ 会員
 主な意見は以下のとおりである。
・ 会員の募集が難しく、新規会員が少ない。
 ヒアリングを実施した市民団体に共通の課題は少なかったものの、上記の課題は、比較的多くあげられていたものである。また、アンケート調査でも、この種の課題は上位にあげられており、市民団体共通の課題といえるであろう。
 また、この種の問題に関連する意見として、次のような意見も出されている。
・ 男性会員の確保が難しく、力仕事など女性会員の能力だけでは、補えない部分がある。
・ 講習などを受講しても、その取得した技術を活用しない人が増えている。
・ 若い会員が入会せず、会員の高齢化が進行しており、会の継続に不安がある。
・ 特定の個人に責任と作業が集中し、負担となっている。
 
ウ 活動資金
 主な意見は以下のとおりである。
・ 活動資金が不足している。
 上記「イ会員」と同様、資金面の課題も、ヒアリングを実施した多くの団体からあげられていた。
 また、アンケート調査においても、藤枝市は組織規模の小さい市民団体が多いことから、活動資金の確保は、上位の課題にあげられており、藤枝市の市民団体にとって共通した課題であると指摘できる。
 また、この種の問題に関連する意見として、以下のような意見も出されている。
・ 補助金は多ければ多いほど多様な活動が可能となるが、事務負担が増えるという難点もある。
・ 助成金は多いにこしたことはないが、市の財政事情を考慮すると無理はいえない。
 
エ 活動拠点・必要機材
 主な意見は以下のとおりである。
・ 他の団体と活動場所の取り合いが発生しており、特に、土日の活動場所の確保は困難な状況にある。
・ 調理室、託児活動に関する備品など、活動に必要な機材などが不足している。
 この種の課題も、アンケート調査結果において、上位を占めている課題である。
 大半の市民団体は、活動資金の工面に苦労しており、自前で活動拠点や機材を確保することは困難な状況にあることから、市民団体の活動を支援するためには、重点事項の一つとして取り組むべき課題であるといえる。
 
オ 情報
 主な意見は、以下のとおりである。
・ 活動するにあたり、協力を依頼したい(依頼すべき)人材や団体の情報が不足している。
・ 市民活動に参加したいと希望する人材が、参加するための情報を入手することが困難である(データベースが未構築である)。
・ 市の窓口担当者以外に、行政各分野の担当者へのアプローチ方法がわからない
・ NPO法人化も考えたいが、そのための知識がない。また、情報の入手方法もわからない。
・ 市内の市民団体に関する情報がない。
 上記「ア組織・運営」の意見を補足するものとして、市民団体にも行政の保有する情報や他の市民団体に関する情報などが提供されていないことがわかる。
 藤枝市において、市民団体との協働や市民自治を確立していくためには、行政、市民団体双方が情報を共有することが必須条件となるため、このような状況は、早急に改善すべき課題として認識し、対応する必要がある。
(5) 支援ニーズ
 ヒアリングを実施した市民団体の支援ニーズに関する主な意見をまとめると、以下のとおりに整理できる。ただし、これらは一部の団体の問題点・課題であり、すべての団体にとって共通の支援ニーズはあまり見られなかった。
 
ア 活動資金
・ 市民団体への資金援助は必要である。
 上記の意見は、アンケート調査結果においても最も多い意見であり、組織規模の零細な団体が多い藤枝市の市民団体には、共通のニーズであると言える。
 さらに、特筆すべき意見として、以下のような指摘も出されている。藤枝市において、市民団体とのパートナーシップを構築するためにも、着目すべき指摘として紹介する。
・ 市は、助成金による支援だけでなく、支援後の協働のビジョンを示すことが必要である。
 
イ 人材
・ 「子供会への専従職員が配置」、「保健センターへのフルタイムの栄養士の配置」、「スポーツ振興課によるコーチの雇用と団体への派遣」など、藤枝市の行政担当者の増員、拡充が必要である。
・ 人手不足なので、ボランティアの支援がほしい。
 上記のような意見は、藤枝市に対して、行政の有する専門性や人材のネットワークの活用といった、市民団体には保有し得ない機能の補完を望む声と解釈でき、今後の支援策を検討するためには、必要な視点であるといえる。
 
ウ 活動拠点
・ 消費センターのような独立した活動拠点が必要である。
・ 主な活動場所として公民館を利用する機会が多いため、すべての公民館に調理室を付設してもらいたい。
・ 学校の家庭科教室など公共施設の利用について、柔軟な対応が望まれる。
 アンケートの調査結果からも伺えるように、市内の市民団体の多くは、会員の個人宅や勤務先を活動拠点(事務所・連絡先)としており、市民団体が活動できる、集える場所の整備は、必要不可欠な支援策といえるであろう。
 しかし、すべての団体の活動のために必要な施設を新たに整備することは、現実的には不可能であり、既存の施設を如何に有効かつ効率的に利用するか、また、既存施設にどのような機能を付設していくべきか、十分に議論する必要があろう。
 
エ コーディネーション
・ 市民団体などの情報を集めて、各種団体が連携を図れるようなコーディネーションをしてほしい。
・ ある程度の支援、情報提供、活動・会合等の場所の確保等は協力してもらいたい。
 主体的・精力的に運営を行っている市民団体であっても、その組織規模からいえば、活動範囲に限界がある。また、市民、各種団体からの認知度・信頼度も現状では低いこともあり、市民団体単体が地域づくりの主体となり、市全体の団体をまとめ上げる、あるいは、各種団体の情報を収集し、その情報を提供していくことは不可能である。
 そのため、藤枝市に市民団体が期待していることは、市に付帯する機能を有効に活用し、その機能を最大限に発揮することであると考えられる。
 つまり、まちづくりの主体である藤枝市がリーダーとなり、各種団体がその能力を遺憾なく発揮できるよう、そして、各種団体の活動が有機的に連携し、より効果的な取り組みが実施できるよう、市民団体をサポートしていくことが望まれているのである。さらに、市民に対しては、市民団体がまちづくりの重要なパートナーであること認知してもらえるよう、その活動や使命を周知していくことが望まれていると指摘できる。
 
オ その他
・ 市の大きなイベント時には、計画策定段階から市民団体を参加させて欲しい。
・ 市の職員の意識が、市民団体の活動の盛衰を左右する。
 
 今後、藤枝市において、市民団体とのパートナーシップを築くとともに、市民自治の基盤を確立するためには、事務事業の協働にとどまらず、政策形成の場においても市民及び市民団体の参加が不可欠となってくる。
 上記のような意見は、一部ではあるものの、市民団体が事務事業を協働するだけでなく、事務事業の企画・立案時から市政への参加を望んでいるものと解釈でき、このような活動意識の高い市民団体を育て、支援していくことが、藤枝市においては肝要となるであろう。
 同時に、市民及び市民団体の市政参加に対する市職員の意識の醸成も、忘れることはできない。国や地方自治体において、市民参加の必要性が謳われるようになり、近年行政運営に市民参加を導入する自治体が増えている。しかし、横並び意識から市民参加を導入した自治体では、市民参加の本来の目的、効果を発揮できず、制度の形骸化が懸念されている。
 そのため、行政内部においても、職員の意識改革や各課の協力態勢の構築を図るため、対象職員への講習会などを開催することも検討すべきである。








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