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付録5
リスクの尺度及び許容性
 
1 リスクには2つの基本的な尺度、個人リスク及び社会リスクがある。リスクは、個人と社会の双方にとって、許容できるものであることが必要である。個人リスクは、孤立した個人に対するリスクと見なせる。一方、社会リスクは、社会に対する大規模事故のリスクである。世の中には、1,000人を死亡させる単一の事故は一人を死亡させる1,000の事故より悪いという、明瞭な共通認識がある。従って、通常、社会リスクの許容レベルは、個人リスクの許容レベルより低い。
 
2 個人リスクは、通常、発生頻度(extrmely remoteからfrequentの範囲で)と結果の厳しさ(insignificantからcatastrophicの範囲で)でリスクを評価する限界マトリックスの形で評価される。社会リスクは、通常、事故の頻度の許容レベル(F)を事故で死亡する人の数(N,or more) に対してプロットしたFN曲線のような手法で評価する。
 
3 夫々のリスク評価を行なう場合には、どの評価方法を使用するかも決定する必要がある。一般的に、1、2人を死亡させる事故は個人リスクを考察した評価が最も適切であり、一方、乗組員あるいは旅客の喪失を起こす事故は、社会リスクを考察した評価が最も適切である。
 
4 いずれの評価方法を用いるにせよ、定量的リスク評価の不確実性は、潜在的なリスク削減量と比較し検討しなければならない。特定のリスク制御オプションの効果についての早まった判断を避けるため、プロセスに潜む不確実性を考慮する必要がある。
 
5 現在のところ、3つのレベルのリスク(許容できない、実際的な低レベル(ALARP: As Low As Reasonably Practicable)、無視できる)があることを認識するのが最も実際的である。
 
6 「許容できない」とは、異常な状況を除き、リスクを正当化できないことを意味し、「無視できる」とは、リスクが非常に小さく、これ以上の予防措置を必要としないことを意味し、そして「ALARP」は、リスクがこれら2つの状態の間にあることをいう。
 
7 従って、フェリーで旅行しているときのリスクは、「ALARP」であるべきである。旅客にとって、「許容できない」リスクを容認する格別の便益は存在せず、また、船による旅行は、明らかに、リスクを「無視でき」、予防措置を必要としないほど安全ではない。
 
8 止むを得ずリスクに曝される(自主的の反対)範囲は、また、リスクの許容度の決定に関係することがある。例えば、港の近くに居住し、船の運航によるリスクに気づいていない人に対して適当とされるリスクは、特定の航路に引き続き雇用されることを選択した乗組員が経験するリスクよりも低い。








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