8 FSAステップ4 : 費用対効果の評価
8.1 範囲
8.1.1 ステップ4の目的は、ステップ3で特定・定義された各RCOの実施に関連して、その費用対効果を特定して比較することにある。費用対効果の評価段階は、以下のように構成される:
.1 検討している状況のリスクレベルについての基本ケースを定義するため、頻度及び結果の双方について、ステップ2で評価されたリスクを検討する;
.2 RCOの採用によりもたらされる費用対効果の理解を容易にするために、ステップ3で定義したRCOを整理する;
.3 全てのRCOについて、適切な費用とその効果を見積もる;
.4 純費用をオプションの実施により達成されるリスク削減量で割ることにより、単位リスク削減当たりの費用を求め、各オプションの費用対効果を見積り比較する;及び
.5 ステップ5の意思決定勧告を容易にするため、費用対効果の見地から、RCO のランク付けをする(例えば、費用対効果のないものや実用的でないものは排除する)。
8.1.2 費用は、ライフ・サイクル・コストで示すべきであり、初期費用、運航費用、訓練費用、検査費用、証明書発給費用、廃船費用等を含むことができる。効果には、死者、負傷者、海難事故、環境汚染と浄化措置、第三者賠償責任等の削減、及び、船の平均寿命の伸びを含むことができる。
8.2 方法
8.2.1 利害関係者の定義
8.2.1.1 上述の費用対効果の評価は、様々な方法や手法を用いて行なうことができる。このようなプロセスは、全体的な状況、更には、対象としている問題により最も影響を受ける利害関係者に対して実施されなければならない。
8.2.1.2 一般的に、利害関係者は、事故や提案されている新しい法規の費用対効果により直接的若しくは間接的に影響を受ける、個人、組織、会社、沿岸国、旗国等として定義することができる。FSAの適用及び意思決定勧告の特定ために、同種の利害を有する別々の利害関係者をグループ化して一まとめにすることができる。
8.2.2 費用対効果の計算指標
付録7に述べたように、Gross Cost of Averting a Fatality (Gross CAF)やNet Cost of Averting a Fatality (Net CAF)のような、人命安全に関する費用対効果を示すいくつかの指標がある。また、財産や環境の問題に関連した費用対効果の評価に対しては、それらに対する損害や影響に基づいた別の指標を使うことができる。このような指標を計算することにより、RCOの費用対効果を比較することができる。
以下に、ステップ4の成果物を示す:
.1 全体を見通してステップ3で特定した各RCOについての費用対効果;
.2 対象としている問題によって最も影響を受ける利害関係者についての費用対効果;及び
.3 適切な指標で示された費用対効果。