IMOの規則作成プロセスで使用するための
総合的安全評価法(FSA)ガイドライン
1 序論
1.1 FSAの目的
1.1.1 総合的安全評価法(FSA)は、リスク分析や費用対効果評価を使用することにより、人命、健康、海洋環境及び資産の保護を含む海上安全の強化を図ることを目的として構築された系統的手法である。
1.1.2 FSAは、人的要因を含む様々な技術及び運用上のバランス、及び、海上安全や海洋環境保護とコストの間のバランスを確保することを狙い、海事安全及び海洋環境の保護のための新しい規則の評価を支援するツールとして、あるいは現行法規とあるべき改正法規とを比較するツールとして、使用することができる。
1.1.3 FSAは、現行のIMOの意志決定プロセスと整合性をもち、決議A.500(XII)「1980年代における機関の目的」、A.777(18)「委員会及びその付属機関における作業方法及び作業の組織」及びA.900(21)「2000年代における機関の目的」に従って意思決定するための根拠を提供する。
1.1.4 IMOにおける意思決定者は、FSAを使用することにより、規則の変更による恩恵(例えば、人命の損失や汚染の削減期待値)及びその決定により影響をうける産業全体及び個々の関係者にかかる関連コストの点から、法規改正提案の効果を評価することができる。FSAは、様々な関係者に公平な法規改定の実施を容易にし、コンセンサスの形成を助ける。
1.2 ガイドラインの範囲
当ガイドラインは、IMOの規則作成プロセスで使用可能なツールとしてのFSAの手順を概説するものである。FSAが様々な関係者の間で一貫性をもって適用されるためには、そのプロセスが明確に文書化され、定められた形式で系統的な方法により公式に記録されることが重要である。これにより、FSAプロセスが透明化され、リスク分析や費用対効果評価及び関連手法の適用に関する経験に関係なく、すべての関係者が理解できることとなる。
1.3 適用
1.3.1 FSAの手順を適用することができるのは:
.1 各国政府の主管庁又はIMOの協議機関として位置付けられた機関が、安全と汚染防止に関する改正及びこれら提案による影響を分析するための関連IMO文書を提案する際に;又は
.2 委員会又はその指示をうけた付属機関が、現行法規の優先順位や適用範囲の特定を目的として、例えば特定船舶またはハザードに関する安全及び環境法規の枠組み全体を見直すために。
1.3.2 FSAは、あらゆる状況での適用を意図するものではないが、その適用は、(社会や海事産業に対する)コスト若しくはその結果生じる法制面や行政面の負担のいずれにおいても計り知れない影響を持つ提案に対して、特に適切である。またFSAは、プロジェクトの範囲にかかわらず、リスク削減の必要はあるが、何をするべきかについて必要な意思決定が不明瞭な状況においても、役立てることができる。これらの状況において、FSAは、提案されている変更の利点が適切に明示されることを助け、加盟国が提案の範囲及び意思決定すべき改善される状態についての明確な理解を与えることができる。