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子どもに求める前に大人自身の変革を

《K&Kコンサルタント》中島清

 

不登校期間 中学1年1学期〜3学期 12歳男子

 

《家族構成》

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深夜の電話相談

電話相談が中心である。相手が希望すれば、どこにでも、いつでも飛んでいく。24時間、365日オープンである。心の痛みに、時間、曜日はないからである。身体の病には、救急医療態勢が整っている。心の叫びにも、同様な態勢整備が望まれる。

この事例の母子との出会いから、1年余になる。しかし、まだ会ったことはない。

初めての電話は、深夜母親からだった。電話のそばから、時々口をはさんでくる声が聞こえ、子どもがいることがわかった。悩んでいることや思っていること、不平、不満、家庭の事情等、ただ聞くことに終始した2時間だった。離婚して、女手ひとつでふたりの子どもを育ててきたこと、遺産相続で多少のもめ事があったこと、不登校の息子のことで、いろいろ駆けずりまわったこと等々。

戸籍調べのような質問はしない。顔も知らない、年齢も知らない。相手のことは、相手との会話の中で知っていくことだけである。会話の内容も、録音したり、記録したりしない。相談記録はないのである。次回の約束などするべくもない。会話によって、元気が出てきたか否かである。相手がもう一度話したいと思えば、電話をかけてくる。相手が、私を選ぶのである。

しかし、人間と人間の関係である。私ひとりが、すべての相談者と合うわけがない。とはいえ、合わせるべきが任務、責任とつい考えてしまう。ここにミスマッチが生ずる。

人間だれもが持っている自然治癒力を活性化させるには、波長の合った先生との会話が効果的なのだ。相談者には、そう伝えている。この人の話なら素直に聞ける、この人と話していると元気が出てくる、この人に診てもらってから良くなった。そんな先生との出会いを求め続けることだ。

この例の母子も、そんな関係の出会いを求め続けた。そして今、ようやくそういう先生に巡り会うことができた。

 

本人について

子どもは姉と弟、姉が高校1年で、弟が中学1年。その弟が不登校だった。

母親が、朝早くから夜遅くまで、土曜日曜もなく働いて、ふたりの子どもを育てている後ろ姿を、子どもたちは見ていた。姉は母のぐちにつきあい、弟も不登校とはいえ、母親との会話は十分だった。

 

 

 

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