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所感

「不登校はどんな子どもにも起こりうる」。このことをどのように考えたらよいのでしょうか。不登校は、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こるものというのが一般的見解ですが、やはり不登校増加の背景として注目したいのは、現状の学校教育制度の問題でしょう。高度経済成長後に「豊かな近代社会」を実現し、今までの授業方式のもとで学習していく意味を子どもたちが体感できず、子どもたちと学校との結びつきの糸が細くなってきていると筆者は考えています。

このような背景のもとで、友人との口げんか、勉強についていけないといった「ささいなきっかけ」から、過酷ないじめ、今までの生育による心の問題まで、子どものそれぞれに起こったことが引きがねとなり、学校と本人をつないでいた結びつきの糸が切れ、不登校に至るのではないでしょうか。もちろん支援にあたって、「その子どもの不登校の意味やテーマ」についての理解を十分に深める必要があるのはいうまでもありません。

カウンセラーとして家族に対して感じることは、子どもが不登校になり、この問題ときちんと向きあうまでが、「家族のひとつの仕事」となってくるということです。ケースによっては、親子の間のコミュニケーションの組み直しが求められます。

子どもに厳しくすべきか、受け入れるべきか。ひとりひとり違う子どもの不登校状態や、その子どもと親とのコミュニケーションのあり方を把握する以前にこの議論が出てくるのはいかがなものでしょうか。大切なのは、厳しい父親・やさしい母親というモデルに基づくか基づかないかではなく、子どもと向き合い、理解を深め、夫婦で相談し合って不登校の支援をすることだと思われます。家族は自らを外へと開き、他人に助けを求める勇気、他人に弱みを見せる勇気を持って欲しいのです。

 

 

 

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