日本財団 図書館


11月19日(火)−市場で働くことが気になるのか、今日は朝から落ち着きがない。大便回数4回。

11月20日(水)−イキイキ新鮮市に下見に行く。行く途中、緊張気味で落ち着かない。社員の人を正面から見ることはできなかったが、あいさつは小声でしていた。その後、友愛病院で院長から励まされ、少しやる気が出てきたようだ。大便回数3回。

<末丸院長とR男の会話>

院長「魚が上手に売れるといいね。これができたら病気も治るよ」

R男「はい」

院長「薬を朝飲んでいきなさい。気分が楽になるからね」

R男「…」

院長「大丈夫。薬はよく効くよ。安心しなさい」

R男「はい」

23日に向けて、抗うつ剤の投与を行い。服用の効果を説明する。

11月21日(木)−やはり朝から落ち着かない。自律訓練も特定器官公式に入る。

標準練習で飛ばしていた「おなかが温かい」を最初の特定器官公式とし、次に最大の不適応要因である過敏性大腸炎へ直接働きかける「大腸が温かい」の暗示に入った。大便4回。

11月22日(金)−明日からの市場に備えて、頭髪を短くすることを提案する。夕方、髪を短く切り、元気にリブにやって来る。不安がかなりふっ切れたようだ。R男は「思ったより短くなった。」と言いながら、テレ笑いをしていた。

11月23日(土)−a.m.8:00イキイキ新鮮市へ。社長の藤井氏に引き合わせ、「市場内では藤井氏がR男のめんどうを見てくれること、そして藤井氏をモデル化し自分の行動に取り入れること」などを説明し、R男を藤井氏に託して私たちは陰から見守ることとする。

藤井氏には前もってR男の状態を説明し、十分な理解をしていただいた上で、市場内でのR男の対応を一任する(藤井氏は人望も厚く、職業柄いろいろな人間の側面を理解し、根気強い方である)。

→セラピスト、両親以外の一般の社会人に接し影響を受けることは、R男に社会性を持たせ、いずれ社会の構成員として独立する自分をイメージ化できるものと考えている。

9:00−買い物客が見え始める。チヌやクロギなどの魚の前に立ち(藤井氏の横)、R男は人の多さに少しぼう然とする。まだ声が出せない。横で藤井氏の「いらっしゃい、いらっしゃい」の声が響く。藤井氏はもう何百回こう叫んだろうか、しかし、R男に声を出す兆しはなく動きもぎこちない。

11:00−2時間が経過した。「いらっしゃい」と、R男のか細い声が初めて聞こえた。体を動かしながら2、3度繰り返し叫んでいる。自分でも声を出せたことに驚いている様子だ。藤井氏がR男に決して強制することなく、R男が仕事をしやすいようにモデル行動で示したことは、大変効果的だった。

藤井氏「おっ、ええ声じゃのう」

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION