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過敏性大腸炎のため引きこもった高校生の再出発

《リブ教育研究所・安田女子大学文学研究科》桜井久仁子

 

不登校期間 高校1年7月(12月に中退)〜翌年12月 16歳男子

 

《家族構成》

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主訴(不適応内容)

1] 予期不安−朝学校へ登校する前、外出前に何度もトイレに駆け込む。

2] 場面恐怖−登校すれば、授業中に何度もトイレに行きたくなる。がまんを重ね教室内に踏みとどまると、今度はおなかがゴロゴロ鳴り、オナラが出そうで落ち着かない。

3] 視線恐怖−教室に入り、特に前の席に座ると周囲の視線や思惑が気にかかり、教室にとどまることが困難になる。

これら主訴を裏付けるように、本人が治療者との面接の中で、「おなかの調子が悪かったが、無理をして学校へ行き、オナラが出てしまった。だれも何も言わなかったが、気づいたはずだ。それ以降、学校へ行くと便やオナラが出そうな気がして、何度もトイレに行くようになった」と語っている。

このことを考慮に入れてみても、上記の主訴が過敏性大腸炎という生理現象を誘発し、加えて本人のソーシャルスキルトレーニングの不足が、病状の悪化に拍車をかけていると考えられる。

 

生育歴および不適応行動発現の経過

公務員の両親はユネスコ活動を通して交際、結婚に至る。結婚後は父親の実家の離れに居住。4年後兄、翌年に本人と続けて出産。その後、母親は仕事を退職し育児に専念する。幼児期は兄や同年齢の子どもたちと元気に遊び、手のかからない子であった。幼稚園入園の前年、実家から徒歩で5分の所に新築移転し、家族4人の生活が始まる。

幼稚園、小学校時代は積極的で明朗活発と評価され、少年野球ではキャプテンとして活躍する。しかし、本人が実際に希望していたスポーツがサッカーであったにもかかわらず、兄の影響で野球を選んだこと(両親の勧めが大きい)、そして結果として、希望しないキャッチャーのポジションを与えられたことや、監督への人間不信などが原因で次第に消極的になりはじめる。

排便に関しては、駆け足で2〜3分の所に学校があり、「大休憩などに容易に家に帰れたので不安はなかった」と後日、本人が語っている。実際に学校のトイレで排便をした記憶はなく、排便用の個室トイレに入ることに抵抗を覚えたようだ。

中学入学後野球部に入部するが、塾とクラブ活動との調整がうまくいかず、また小学校の時不満だったキャッチャーにならされたことなどで、クラブ活動自体を楽しめなかったようである。

 

 

 

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