*朝、迎えに来てくれるY君に、登校するかどうかを自分で連絡すること。
そして、登校するまでの過程を次の6つのステップに区分し、自分で実行できるステップまで実行することとした(Kの場合、9月に入り数日登校していて、抵抗なく制服を着ることができたので、ステップ1以前を省略した)。
ステップ1 制服だけを着る。
ステップ2 制服を着て玄関まで出る。
ステップ3 制服を着て玄関まで出て、靴をはく。
ステップ4 9時ごろ母親の車で学校の周りを2周する。
ステップ5 9時ごろTの車で学校の周りを2周する。
ステップ6 9時ごろTの車で学校の周りを2周し、養護教員が正門の前に迎えに出る。
なお、登校しない日も必ず15:00までは制服を着用することとした。母親は毎日弁当を作り、玄関に置いておくことも約束をする。
⇒9月8日 Kのいやがる美術の授業が2時間あるためか、登校を渋る。
ステップ1の制服を着るだけであった。
⇒9月9日 Kのスケジュールによると登校できる日なので、約束どおり登校を促
す。
少し渋るがY君と登校する。
⇒9月10日 体育の授業があり、Kは最初から登校できない日と決めてきたので、Tは登校刺激は入れず、黙ってKの様子を観察した。ステップ2の制服を着て玄関まで出て、KはY君に「ごめんね。今日は学校を休むから」と言って、部屋に入る。
⇒9月11日 Kのスケジュールによると、今日は登校できる日であったが、昨夜は遅くまで寝つかれず、朝はいつまでもぐずぐず言っていた。
TはKと30分話し、ステップ3を実行した後、外に出て自分の家の門扉にタッチをした時点で、今日は終了とした。
9月18日 10:30 Tは母親といっしょに学校訪問する
担任、副担任と話し合い、副担任と養護教員を中心にKを援助することを決める。
9月27日 文化祭
Kは出席をして、みんなで手話の歌を歌う。保護者や先生方の励ましに、Kが少しずつ学校になじんでいる様子がうかがえる。Kは9月終了時にはステップ4まで実行した。初めて、母親の車で学校の周りを回った時(ステップ4)、Kは車のシートに屈み込み、周囲の目をしきりに気にしていた。しかし、2度目は校舎の窓を指し、Tに「あれが僕の教室だよ」と教えてくれた(出席率48%)。
10月 Tの車で学校に行き、養護教員に出迎えられる(ステップ6)
Kは少し照れていた。しかし、Kと養護教員とは十分な人間関係ができているので、Kも緊張することなく、うれしそうに対応していた(Tの朝の家庭訪問は、Kが学校に行き渋る、美術がある月曜日と体育と音楽がある水曜日に限定した。9月の結果から、この曜日はほとんど学校に行っていない。そこで、10月は月曜日、水曜日に限り2時間連続して保健室に行くことを許可し、登校を促した。出席率54%)。
*この頃から、母親は少しずつ行動論的手法を体得し、行動や会話の中に十分生かされるようになったので、Tは徐々にKとの直接接触を減らしていくこととする。