日本財団 図書館


心の奥を見つめることで立ち直っていった女子高校生

《城内カウンセリング研究会》蔭山昌弘

 

不登校期間 高校3年5月〜7月 18歳女子

 

《家族構成》

170-1.gif

 

当事者との面談

5月下旬、A子さんの母親が相談にみえた。高校3年になって、疲れる、行きたくないを連発していたが、もう限界だといって2日続けて休んだという。

その日の夜さっそく家庭訪問すると、彼女は自分の部屋に迎えてくれた。

高校2年の冬頃から、友達の前での緊張が激しくなり、学校に行き渋るようになった。3年になり、新しいクラスになると緊張が日ましに強くなり、耐えられなくなったのだという。友だちといっしょにいても、何を話してよいのかわからなくなってしまい、言葉が出なくなってしまう。授業中はがまんできるが、休み時間になるとパニックに陥るという。

訥々と、時に激昂し、時に涙しながら、彼女は苦悩を言葉に表した。

今は学校へ行かねばならないと思いながら、どうしても足が出ないという。そこで、「学校へ行かなければならないなどと考えず、今は、ゆっくりと心と体を休めるように。心が疲れた疲れたと言っているのだから、まずは休んでエネルギーをためることだ」と話し、心の疲れを取り除くために、心に浮かんだことを1時間ほど紙に書きつけてみて欲しいと話した。また1週間後に来るから、その間に見た夢で、覚えているものがあったら書きとめておくように頼んで辞した。

おそらく心の中は大混乱なのだろう。混乱をそのまま言葉に表すことによって、混乱の正体が見えてくるかもしれないし、カタルシスの作用が働くかもわからない。心の奥の揺れは、夢を通して意識にのぼってくるかもわからない。そう考えて提案したのだった。

 

親への恨みと自己嫌悪

A子さんは2人姉妹の長女。両親との4人暮らし。学校の成績は良い方で、コツコツまじめに勉強に励む努力家。友達は多くなく、友達ともあまり話さない。しかし、自分では、無口なほうではないという。

1週間後、家庭訪問。この間、学校は欠席。自由に書いてもらった文章には、激しい自己嫌悪と、両親や友人に対する攻撃とが連ねてあった。自分は、親に愛されることなく育ってきた。友達に対して、どう接していいかわからない。学校へ行かなければならないと思うが、教室に入って周りに気を使わなければならないかと思うと、足がすくんでしまう。自分が情けない。苦しい。見た夢では、友達が登場していっしょに楽しんでいるのだが、自己主張せず、相手に合わせてしまうところで目をさましたという。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION