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名を明かさず相談できるメリット

そのためか、相談掲示板への相談は日に2、3件のペースであるのです。いじめや不登校、進路や進学の悩みなど多様です。そのつど、いろんな人が相談に対して答えを書き込みます。しかし、悪意ある文章は今のところありません。相談した人には多くの人がアドバイスを書き込みます。つまりそれは、自分のことを心配してくれる人がいるのを知ることにつながります。それも、見知らぬ第三者でもです。相談者は名を明かすこともなく、自分は大切な存在だったのかと、自分の価値を再認識できます。そのためでしょう、相談した人が自信をつけ、アドバイスする側になる例もあります。ある少年、少女はいじめられていましたが、その体験をみんなが受け入れてくれたことで、今では自分が共有できるいじめなどの悩みに答えてくれています。時々“居場所”にも来てくれます。

そうやって少しずつ自信をつけたメンバーが、チャットで知り合った不登校仲間に会うために旅をしたり、文部科学省の官僚に「麦の根」の活動を伝えるために会いに行ったりもしています。そのような交流は現在でも続いています。こう書くとすばらしく聞こえるかもしれません。しかし、「麦の根」に合わない子だってたくさんいます。一度しか“居場所”に来なかった子も多くいます。それは「麦の根」のスタッフに欠点があったり、場の空気と合わなかった子たちでしょう。それは、人だから避けようもありません。

だけど、苦しむ子たちに多様な場を紹介できるネットワークがあれば、その子に合ったいろんな所を紹介することができるのです。現に「麦の根」には、全国から地域の居場所や、話相手を紹介して欲しいという相談が寄せられます。九州や中国、北海道からもよく問い合わせがあります。しかし「麦の根」は、必ずしも全国の“居場所”を知っているわけではありません。ですが“居場所”や不登校者のネットワークを広げることで、富山や全国に思いを共有する人たちの、『地域を超えた新しい地域』というものを作ることができると信じています。

こうした思いを秘めて、親に強制されたわけでもなく、若者たちの自発意思としてインターネットを使い、「麦の根」は運営されています。

 

電脳塾で居場所を増やす

「麦の根」の活動の中から、新しくできたのが「電脳塾」です。「電脳塾」が活動を開始したのは2000年の10月からです。毎週土曜日の午後に開かれています。「2001年未来基金」という、ビル・ゲイツが出資した財団へ提出した企画が通ってスタートしました。

 

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