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厳格な父が引き起こした12年間の引きこもり

《マインドヘルスパーソナリティセンター》矢吹孝志

 

不登校期間 高校卒業時〜30歳(12年間) 18歳男子

 

《家族構成》

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当事者について

いつも父にしかられていた

事業を経営する厳格な父親と、いわゆるやさしく献身的な母親との間に長男として誕生する。彼自身の話によれば、父親に対するイメージは、物心ついた頃からとにかくコワイ父親であったという。

勉強のことはもちろん、生活態度をはじめ、何かにつけいつもしかられていたというイメージしかないという。中学の頃には、父が帰宅すると必ず呼びつけられて説教され、時にはなぐられることもしばしばあったという。他に兄弟(弟が2人)がいるが、しかられるのはいつも自分だけである。父のそうした態度に、いつしか「自分は憎まれているからしかられるんだ」と思うようになり、激しい孤独感や不安感、罪責感をつのらせ、自分がなくなっていくように感じたという。毎日のように繰り返される叱責や激しいののしり。父の声を聞くだけで、体が硬直してすくんでしまうこともたびたびあった。

高校3年を迎える頃になると、大学進学という現実的な問題があり、父の期待に応えられない自分に対して葛藤の毎日が続き、高校3年の2学期から、いわゆる不登校の日が多くなり、生活も引きこもり気味になる。腹から胸にかけて、いつも熱風のようなジリジリ熱く痛いものを感じ、苦しい日々を送ったという。

どうにか高校は卒業したものの、将来への夢が持てず、その後30歳になるまで約12年間、長く苦しい引きこもりの生活に入る。その間父との関係に変化はなく、根性のない子、ダメな子、そして怠けている子として扱われる。ただそれでも、母のやさしさだけはなによりの救いだったという。

 

不登校になる前と後の性格等について

明確な変化は見受けられない。性格や気質については、本質そのものは短期間で変化するものではなく、生活状態に応じ抑圧されて出現したり、または活発になったり積極性を持ったりするものと考える。

 

―経過―

受け入れから自立回復まで

フリースクール&スペース「うつみね健康学園」は、トータルカウンセリングを事業主体としている、マインドヘルスパーソナリティセンターの付属研修施設として運営されている。

 

 

 

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