祭りを通した、地域住民との触れ合い。
中学校へ通いだす
隆司が入寮して2カ月、恵が中学校へ通いだした。それを見た隆司も、「自分も家へ帰って中学校へ行く」と言いだし、両親に盛んに電話をしはじめた。電話のむこうの親は、ただオロオロしてなんて答えてよいかわからない。私のところへも、いちいち連絡が入る。本人はだいぶ体も動くようになり、手洗いも少なくなってきた。しかし、いつもうつむきかげんで、まだ人との距離の置き方がわからない。自分なりには少し自信がついたのだろうが、まだまだ人の中に入るのは無理だ。ここで失敗すれば、また元の生活に戻ってしまう。
しばらく様子を見ることにした。それからさらに2カ月、手洗いはなくなり、だいぶ上を向いて話すようになってきた。まだまだ不安材料はたくさんあるが、ここから中学校へ通わせることにした。
登校初日はかなり緊張し、青ざめていた。しかし帰宅すれば、けっこう元気に話をしていた。勉強の遅れは気になっているようだ。
日がたつにつれ、学校生活にも慣れてきたようだ。2年生になる時、家へ戻りたいとのこと。また親は、オロオロしはじめる。私は一蹴した。彼もふっきれたようで、陸上部にも入り、体力も向上した。「はぐれ雲」にも次々と新しい子が入り、仲の良い子もでき、最近では冗談もとばしている。地域での評判もかなりいい。学校が休みの時は農作業や当番を手伝ってくれるが、その手際の良さには驚いた。
3年生になる時、両親が東京へ引っ越したことを理由に家へ帰ると言いだす。また親は、オロオロしはじめる。私は、部活を最後までやって、夏休みは東京の予備校の夏季講習へ行ったらどうかと提案した。彼はあっさり納得したが、2学期からは東京の中学校へ行くとのこと。私は「その時考えたら」と返事。