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オロオロするばかりの父親を乗り越えて自立へ向かう子

《はぐれ雲》川又直

 

不登校期間 小学6年3月〜中学1年7月 12歳男子

 

《家族構成》

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当事者について

隆司は小学校6年の秋から学校を休むようになった。父は横浜出身のエリート会社員である。母は専業主婦で兄弟はいない。父の仕事の関係で、小学校3年の時、福島へ家族で転居した。

水泳やスキーは得意だが、球技等は全くできない。学校の成績は良く、委員にも選ばれていた。彼は福島へ行っても標準語を話し、弱々しく見え、また理屈をこねるので学校での友達関係は良くなかった。

学校を休みがちになる頃より、入浴時間が長くなりはじめ、1時間程度になってきた。さらに正月明けからは、就寝前に手洗いを2〜3回行うようになり、2月下旬からはさらに手洗いが激しく、親に対する態度も高圧的になってきた。3月からは学校へも全く行かず、外出もできなくなっていた。親は異常に思い、近くの精神科医に連れていった。

それからは家に引きこもり、テレビ中心で昼夜逆転の生活。食事も不規則で、家の者が作った料理は食べない。直接物に触れることができなくなり、手洗いを繰り返す。本人はつらいから手を洗うのだと言う。家の者が、物に触れたといっては怒鳴ったり、家の者を絶えず自分の手足として使い、思いどおりにならないと言葉の暴力を浴びせるという。

 

―経過―

父親との面接

7月上旬に、父親より「はぐれ雲」に相談の電話があった。私はとりあえず、「親だけでも見学に来てはどうか」と返事をした。その数日後、父親が来て面接をした。一応話を聞き、こちらの生活の概要や方針等を説明した。しかし、私としては早く親から離れて生活したほうが良いとは思うが、まだ中学校1年生、本格的に引きこもってまだ4カ月、家庭内暴力もないとのことなので、余裕はあるとみた。それより、父親が性急に事を運ぼうとして、タイミングを誤ることのほうが怖かった。

父親へは、まずここへ見学に来たことは正直に言うこと。次に、ここの資料を子どもに見せる。子どもは当然、「行きたくない」と言うに決まっているから、その後1週間はこのことに触れないこと。もちろん、本人から質問があるようなら、少しは自分をどうにかしようと思っているはずだから、それには答えること。それから一度見学に行ってみようと誘えばよい、とアドバイスをした。とにかく引きこもって2年や3年といった人たちに比べれば、余裕があるということを繰り返し言った。

 

 

 

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