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Kさんの勧めで、長崎の学校を受験することに決めかけながら、担任のM先生の勧める高校も考えながら、合否はともかく、本人には受験する考えはあったようです。結局、迷った末長崎のほうを2月に受験しましたが、結果は不合格でした。でも、内心はショックだったとは思うのですが、表面は落ち込んだふうには見えませんでした。また振り出しに戻り、担任の先生と進路について相談しました。通信制など考えましたが、長男も整理がつかず、なかなか決められませんでした。そんな時Kさんが、中学校を3月に卒業したら「こちらへ来て、ひとりで生活して、仕事を1年間したらいい」と提案してくれました。

長男も、ひとりで暮らしたいと言っていたこともあり、Kさんの近くで暮らすことにしました。Kさんに部屋も探していただき、フリースクールにも来たりして、自分の人生を決めることになりました。中学校も無事3月に卒業して、4月の中頃からそちらへ行き、次の日から、自分で仕事探しを始めました。自分ひとりで、自分の足で、知らない土地で一軒一軒仕事先を探して、何回か断られながら、ある焼肉屋さんで面接してもらうことができ、4月22日頃から最初は午前中だけ働かせていただけるようになりました。今長男は、自分の今からの進路をどうするかを考えながら、自分で道を見つけるためにがんばっています。

 

親として思うこと

親として今言えることは、あんなに悩み、暗くなって部屋に閉じこもって、ベットの上でひざをかかえたり、ギターを弾いたりしていた子が、自分から飛び出して行ったのです。朝も起きられなかった子が朝も自分で起きて、布団も干せなかった子が布団も干して、不便な生活をしながらも、一日一日を、不登校の日々を取り戻すようにがんばっているのです。

親はいったい、この長男のために何をしてきたんだろうと思うばかりです。本当に、Kさんのおかげです。Kさんは、「ぼくに、感謝などしなくていいです」と言われると思いますが。

長男の不登校のなかで、親もいっしょに悩み、たくさん遠回りもして来ました。長いトンネルの中にもいました。だからこそ、長男のように不登校で悩み、色々精神的に疲れている家族の方たちのために、少しでも力になれたらと思います。確かに、長男もまだ始まったばかりですし、また、いろいろ悩むこともあると思いますが、不登校の頃に悩んだことが、これからの長男の力になってくれるだろうと確信しています。

高校、高校とこだわらず、大学とこだわらず、人生は1年、2年、3年遠回りしても出発できます。

私は、長男の不登校でパニックになり、今現在も、下の娘が小学5年で不登校です。今までは、長男と娘の両方で悩んできましたが、長男はいい意味で陰から見守り、娘のことに集中していかなければと思います。

長男に学んだような気がします。えらそうな意見ばかり長男に言ってきたのですが、今からは逆に、親のほうが言われそうです。今考えると、T君、あなたは不登校になってよかったと思います。不登校になって、悩んで、悩んで、今こうしてりっぱに一歩ずつ突き進んでいく姿を見ることは、親にとって本当に幸せです。大きな人間になって下さい。今のあなたなら、どんな夢もつかめると思います。前進あるのみ。

 

 

 

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