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「また何かに悩んでいるようだ」と思いました。そして、こんな状態がまた続き、10月4日の朝になりました。制服を着て用意まではするのですが、どうしても登校できません。その日は主人が学校へ行き、担任は休んでいたので校長先生とお話をして、長男が学校に行けない理由がわかりました。原因は、クラスのS君のいじめでした。また、他の関係している生徒たちの目が気になるのも、原因のひとつであることがわかりました。

 

表は仲良し、裏ではいじめ

一日一日、新しい学校にとけ込もうとしている長男と親しくしてもらっていると思っていたS君からの陰湿なイジメでした。S君だけでなく、S君と仲の良いH君もいっしょでした。特にS君は、家に遊びに来て仲良くしている振りをして、学校では、長男がモアイ像の顔に似てると、1年のクラス、3年のクラスに言いふらしていたのです。また、ゴキブリスプレーを振りかけるまねをしたり、臭いと言われるとか、いろいろされていたようです。

この問題も、担任を通してS君、H君に注意をして指導することになったのですが、指導して簡単に直る子どもたちではないのです。転校して来た時の、すごく素直で優しいという友達の印象は、完全にこわれてしまいました。

そして長男は、親以上にまた落ち込み、自分の体に自信を失くし、外に出ることも少なくなりました。あまり親の目を見ることもせず、いろいろ励ましたり、登校するように説得しても、下ばかり見て顔を上げることをしなくなりました。

前の中学にいた時より、いっそう悪くなる感じです。そしてこの頃の長男は、あまり強く説得すると、自分が納得しない時には、にらみつけたり、言い返したりするようになりました。親子ゲンカ状態になり、興奮気味になって、にぎりこぶしを作る時もありました。毎日、毎日、学校側は長男が登校してくるのを、ただ待っているようでした。でも朝になると登校する気配もなく、そして親が促しても無理なので、欠席の電話連絡をする日が続きました。そしてびっくりしたのは、この間担任のY先生が家庭訪問の日も入れて、家に顔を出してくれたことが全然と言っていいほどないことでした。ただ熱血だけの担任です。

 

担任からの電話

そして10月7日に、長男にとっても親にとっても、完全に登校できなくなるようなショッキングなことがありました。それは、担任が電話で長男に言い放ったすごい発言でした。「俺はお前が学校に来なくても別に困らん」とか、「俺は義務でしているだけで、給料をもらうのと家庭を守るためにしている」とか、「いちばん困るのは、校長とお前だけ」と言うのを長男の耳が聞いたのです。その上、「学校が、こんなにいろいろとしてあげているのに、お前はそれにこたえようとしない」と言ったらしいのです。私も長男のすぐそばで、長男のその時の表情を見ていました。長男はつらそうな顔をして、にぎりこぶしで自分の太ももをたたきながら、電話をガチャンと切って、足早に部屋に戻り、マンガの本を床にたたきつけたのです。そして、悔しそうな顔で私に「お母さん、教師があんなことを言っていいのか?」と、くってかかりました。

 

 

 

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