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どこに相談しても「あせらず、気長に」

長男は、学校を休んで家にいて腹痛がない時は、普通な状態で元気もあるのですが、少し暗いような感じもありました。教育委員会にも電話で相談したり、直接主人と相談に行ったりしました。カウンセリングやホットコールなども何軒か回りました。しかし、結局どこへ行っても答えは同じですし、相談員の人も表向きにはいろいろ言いますが、動いてくれるわけでもなく、話はいつも「あせらず気長にがんばりましょう」で終わるだけでした。今思うと、どの相談員も何の手ごたえもなかったように感じます。

ある相談所では、長男が生まれる前の頃の、妊娠中のことまで遡って聞かれたこともありました。ショックでした。「なぜそこまで聞かれる必要があるのか?」と思います。不登校の原因は、妊娠中の何かまで影響があるのだろうか?と、疲れもあるせいか、そう思ったこともありました。

私たち家族は、この頃一案として、環境を変えることと、子どもの転校のことも考えていました。すぐに決まったわけではありませんが、子どもに話したら、「転校すれば再スタートできて、次の学校でがんばれるような気がする」と、確信はできなくても、そう言ってくれました。本当に私たち家族は、精神的に疲れていました。あのままの状態が続くと、私がどうにかなっていたかもしれません。世間から見れば、「オーバーな、親がしっかりしてないからだ」と言う人もたくさんいるでしょう。

でも、何事もそうですが、その当人でなければ、不登校の親を100パーセントわからないのです。不登校の原因は、小学生だろうが中学生だろうが高校生だろうが、子どもによってみな違うのです。いじめ、ストレス、プレッシャー、家庭のこと、人間関係、担任の先生との関係、人生、社会のこと、親子関係みなさまざまです。そして、不登校の本人自身さえ、理由がわからない面もあるのです。

 

家族ぐるみの引っ越し

そして私たち家族は、長男が中学1年の春休み前の3月に、環境を変えるために田舎の方に引っ越しをしました。長男も、その頃は腹痛も少しおさまり、まだ元気は少し足らない状態でしたが、違う学校への期待で表情も明るくなっていました。新しいT中学校は全校生徒数も少なく、長男のクラスは長男を入れて14人ぐらいです。

中学1年の春休み前に転校したので、春休みが終わるとすぐそのままのクラスで2年生になります。長男も、自分からクラスの友達にとけ込もうとしていたようです。2年の担任の先生にも、すぐ始まった家庭訪問で今までの不登校のことをお話しして、受け入れてもらってました。男性の先生でした。

長男も、自転車で普通に登校していました。部活はテニスしかなかったので入らずにいましたが、クラスの男子や女子、そして3年生の先輩までもが家に遊びに来てくれて、良い状態になったなあと親も少しホッとしていました。

4月、5月、6月と普通に登校しました。体調が悪いと休むこともありましたが、がんばって登校している面も見えるし、転校生としてまだ慣れない面もあるので無理ないと思っていました。でも9月の29日、30日あたりに「頭が痛い!」と言って、2日休みました。そして翌日、制服に着がえて学校に行こうとするのですが、靴をはいてからまた一歩が出ずに、7時30分になっても、40分になっても動かないのです。また部屋に戻って、ウロウロ、トイレに行ったり、また自分の部屋に戻ってベットに座ったりする状態になりました。

 

 

 

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