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しかし薬に頼ることになるので、私の逃げと思い踏みとどまった。私は、苦労をすべて背負い込んでいるような気持ちにもなった。一日一日、必死の思いで対応するしかない。持ちこたえなければ、私がやらなければならない最大の試練!!

今思い返してみても、無我夢中だったので記憶すら消え失せているといった表現になるだろうか。

弟の要望で、父親にも10年ぶりに会った。意地やこだわりをぬぐい去る。長男は、父親と対面して震え、棒立ちになり、弟は喜んで父親と外出した。私は、長男の中にたまっている複雑な思いを感じ取り、背負わせてしまったものの大きさにたまらなく申し訳ない気持ちになり、いつか必ず楽にしてあげたいと思った。

夏も終わりに近づく頃、弟の部屋で話をしていると、長男が顔をのぞかせるようになった。少しずつ変わり始めているのを感じた。

秋になり、腎臓の検査のため病院に定期的(1年に1度)に行くついでにと、I先生の所へ寄ることを子どもに伝える。拒むことなくついてくる。やっと第一歩を踏み出した感触を得た。

先生と対面。1年ぶりの人との接触、直感で子どもは先生を気に入ったと思った。先生にお願いすれば、子どもひとりで会いに行く日も遠くはない、と思った。

 

大検に向けて

平成11年を迎え、弟も兄を受け入れ始め、やっと親子3人家族に戻れた気がした。

弟の進路も決まり、気持ちに少しゆとりができたので、グループセラーピーに行くことにする。長男もドタキャンしながらも、定期的に通うようになってくれた。私よりも先生に心を開いている様子、少し悔しい。先生からいろいろ言われるが、なかなかできないし、わからない。焦りは禁物、開き直ることにした。

大検を受けると言うので、参考書を買ってみたものの、見るわけでもなく、相変わらずの日々。ただ、一日家にいるとつまらない、と言い出した。私の仕事を手伝ってくれるように話すと、時々店に来るようになった。

大検の申し込みが始まり、子どもに再度確認。「受ける」という言葉に、あわてて準備を始める。「信じて待つ」。大検を受ける?本当に受ける気があるのか?3日間の受験、途中で挫折しないか?不安はあった。

くどくど言わず信じてよかった、と思っている。この頃から、私と長男の距離が少し近づいたのを感じた。

結果は8科目合格。本当にうれしかった。

 

専門学校に入学するまで

大検8科目合格。残り3科目は来年だな、と思っていた。先生から、通信制高校で単位が取れると聞き、何も知らないことで、遠回りにもなることを認識した。合格見込みの特例の話をすると、わかっているとのこと。自分の将来のことについて、子どもはちゃんと見極めていると思った。

レポートとスクーリングを終え一段落。何校かの専門学校の案内は取り寄せてはあったが、無言。

 

 

 

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