すばらしい校長先生
具体的に、どの対応が学校に通うきっかけになったかわかりませんが、本人が十分休んで力を取り戻したことや、比較的早く、学校に通わない、通えない息子を認めることができたこと、弟の誕生、入学が重なったこと、校長先生や担任の先生が息子のペースに合わせて、慎重に対応してくださったことなどによって、息子の気持ちに変化が生じたのではないかと考えています。
特に、新しく赴任された校長先生との出会いは、私たち親子に大きな影響を与えてくれました。とにかく息子を愛してくださいました。校長室でいろんな話をお聞かせくださり、また息子の話にも、じっくり付き合ってくださったようです。給食も、職員室で先生といっしょにいただいたりしていました。
教室に戻るきっかけ作りも、タイミングを実によくつかんでくださっていたようです。そして、教室へ戻ってトラブルが起きるとまた校長室へ戻ったり、お友達との関係作りにもすばらしいご指導をいただきました。この校長先生との出会いこそ、息子にとって何よりの財産になったのではないかと思っています。
また、新しい取り組みにもご熱心で、ゲスト・ティーチャーとして、PTAの方が得意分野を活かした先生になるという取り組みもされました。私も音楽が専門分野なので、子どもたちと合奏を楽しんでいます。この取り組みは、4年生以上の学年の子どもたちが、土曜日の1〜2限を使って自分の希望するクラスで学習するというものです。川の探検やお料理、手芸、またスポーツの分野ではタスポニーなど、このほかたくさんのクラスが用意されていて、子どもたちはとても楽しく時間を過ごしています。
私にとっても、学校が近い距離になったことは言うまでもありません。
篠崎史紀さんから学んだこと
さて、そんなわけで今は楽しい学校生活を送っているわけですが、私には私の価値観を大きく変えてしまったもうひとりの人との出会いがあります。
NHK交響楽団第一コンサートマスター、篠崎史紀さんです。篠崎さんとは、子どもが不登校だった頃に出会いました。私はもともとクラッシックが好きでしたが、このY市に演奏会にいらっしゃった篠崎さんとお話する機会がありまして、篠崎さんの経験やお考えをお聞きいたしました。
その時彼はなんと、「短所は個性だからね」、実にきっぱりと言い切られました。すべてにプラス思考なんですね。彼の学生時代は、ずいぶん規則の外におられたようでした。私のイメージだとコンサートマスター、イコール、ヴァイオリンだけの人生だったので、びっくりしました。
例えば、幼稚園時代のお絵かきの時間、猫を描くことがテーマだった時は、猫の毛だけを画用紙に描き、また、時計がテーマの時には、時計の振り子を右、左に首を動かしてじっとながめていて何も描かずにいたそうです。先生は「なぜ描かないの?」と尋ねられたそうですが、「時計の音が僕には描けない」と答えられたそうです。先生は「そうなの」とおっしゃって、そのまま何も描いていない絵(?)を掲示されたそうですが、それを認められた先生はすばらしいな、と私は思いました。子どもは認められたことが自信につながり、積極性が出るのだと思います。