小学校の男の子が例になっています。学校が終わった放課後、お母さんが校門のところまで迎えに来たときの、お母さんと男の子の出会い方に4つのパターンがあるという話です。
1番目の例は、お母さんが校門で両手を広げて待っているところへ、男の子が走って来てお母さんの懐に飛び込んできます。お母さんが「お前はママのことが好き?」と聞くと男の子は何も言わないでギュッと抱きかえすという出会い方です。
2番目、3番目、4番目の例は同じように走ってくるのですが、お母さんの目の前で、間をおいて停まってしまいます。お母さんが「坊やはママのことが好きじゃないの?」と聞くと男の子は「ウン」と答えます。それに対するお母さんの言葉が次のとおりです。
2番目のお母さんは「そう、いいわ。でも一緒におうちに帰りましょう」と言って一緒に帰ります。3番目のお母さんは子どもが「ウン」と言ったとき、「なまいき言うんじゃないよ」ってバシッと頬を叩くんです。4番目のお母さんは「うん、だけどお母さんはお前がお母さんを大好きなんだってことをちゃんと知ってるわ」と言ってやさしく抱いてあげます。
レインは最もやさしそうに見える4番目のタイプが、いちばん危ないと言います。
1番目のケースは、ほとんどの子どもが最初はそういうことを経験するので、これは別格です。
2、3、4のケースは、子どもが初めてお母さんを他人として見はじめた場面です。そしてその他人の前で、お母さんと違う者として、お母さんが思っているものと違うものとして自分を主張しだしたのです。
2番目のケースでは、お母さんはそこで起こりかけた対立をすぐ解消してしまわずに、いったん保留の状態において「でも一緒に帰ろう」と言って帰る。つまり、そこに生まれたある距離を大事にしながらそのまま帰っていくケースです。
3番目の子どもは実は逆説的にとても幸福だと言えます。お母さんが「お前はそんなこと私に対して思ってはいけない」ということでバシッと叩くと、子どもの方は「あの人は僕と違う人だ」と、ますます対立感を強めるのです。