日本財団 図書館


ボランティアのケア、それは、ボランティアの苦悩を、人間の根源的な営み(生命活動)における傷つきやすさのあらわれとしてとらえ直し、その苦悩を共同でシェアできる土壌を耕していくことである。そのような「ケアの文化」のもとで苦しみを乗りこえていく経験はボランティアにとって、人間的な成長のための大切な糧となる。

 

4 自分が自分になる

では、ボランティアにとって、今どういう「ケア」が求められているのだろうか。

ヒアリング調査でのこの問いかけに、ボランティア活動でバーンアウトした(燃え尽きた)経験をもつ女性は、次のように語っている5)

 

そこにいて活動しているボランティアだけが大切にされ、擦り切れたら使い捨てになる状況に置かれたとき、「ボランティアって手段なの?」と感じた。燃え尽きた後の自分の状況を受け入れるために何か「ケア」があれば、と思ったけれど、でも、それはもしかしたら他人がやるべきことではないのかもしれない。

 

今回の調査で、調査員と協力者がボランティアについて共に考え、自分の言葉を見つけようとする試みから得られた「セルフケア」という新しい視点。それは、強いものが弱いものを助けるということではなく、対等な関係のうえで互いに自分で考え、表現し、行動に移すための仕掛けや機会をつくることの重要性を示しているのではないだろうか。

現代社会では、強く自立した人間観が主流を占め、そうでない人は、保護とか援助の対象にされてしまいがちである。しかしボランティアは、強者と弱者という関係を超えたところにこそ価値を見いだすことができる。役割や立場に規定されない、自由な存在として他者に関わるがゆえの傷つきやすさ。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION