また、看護の仕事につくある女性は、調査のなかで次のように語っています。
仕事をしているときは、利用者との関わりのなかで『ケアしなければ、何かしなければ』と常にdoing(すること)の状態で、自分のことは後まわしになっている。なかなかうまくいかないケースワーク、利用者との関係上での失敗、苦手な業務に対する苦痛などによって、毎日疲れます。
自分のために、利用者のためにただそこに居ること、being(あること)がなぜできないのか?
自分がいきいきすることは何か?わくわくすることは何か?もっと自分を知ろう。自分を見つめよう。
介護や介助、あるいはボランティアという活動や行為そのものは「する」という営みの総体といえます。ケアの現場では、あらゆる「する」営みを要求され、あるいは自ら求めて実際に行っています。そのなかで、ケアする人は、自分自身への眼差しをもつことによって「そこにある」こと、「そこにいる」ことを深く意識し、「する」営みに奥行きをもたらすことができるのではないでしょうか。
つまり、他者との関わりのなかで「ここにいる私」を実感できることこそ、ケアする人に自分を好きになることや、生きることの深い喜びをもたらしていると考えられます。
では、業務がなかなかうまくいかなかったり、利用者との関係で失敗をしたり傷ついたりする日常のなかで、どのようにして深い喜びを感じられる自分をもちつづけることができるのでしょうか。
ケアする人から共通して語られたことは、誰かが傍らにいてくれることの必要性です。愚痴を言う相手であったり、自分のことを本当に理解してくれる人、自分に対して「それでいい」と言ってくれる人、そういった他者の存在です。それは、自分の存在価値や自分の生き方を、他者の見方や判断にゆだねることではありません。