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私たちは「ケアする人のケア」という問題をとおして、「ケア」そのものについて深く考えると同時に、私たち自身の生きる文化や共同体のあり方を問う必要があると考えています。

 

セルフケアをケアする

ケアに関わる人は、ケアの必要な人を前にして自分自身の価値観や生き方が大きく揺さぶられる経験をします。ケアする相手に誠実に向き合い、理解しようとすればするほど、大切に思えば思うほど、そこで感じる喜びや苦悩はひととおりではありません。「ケアする人のケア」は、そのような人の苦悩を単に誰かが取り除くことではありません。絶え間なく揺さぶられることで疲れきった心と身体を、他の誰かに頼って回復させることは根本的な解決にはならず、自分の力で生きていくことをむしろ不安にさせることになるからです。

もともと人間は弱く、しばしば壁にぶつかることがあります。そのときに、何らかの方法や道すじを自分自身で見つけられるような環境が必要となるのではないでしょうか。

そこで、私たちは、何らかの方法を自分で見つけられるように支えること、すなわち「セルフケアのケア」という点に着目しました。

では、「セルフケア」とはどのようなことでしょうか。

「ケアする人のケア研究集会」において、ヘルパーをしている若い参加者の男性から次のような発言がありました。

 

利用者や友だち、家族など、相手の気持ちを聴くことで、自分のなかにそれを取り入れ、自分自身を新たに知ることができる。そして新たに知ることは、自分自身をもつということで、自信につながるのではないか。その自信は、自分を好きになれるということにつながって、結局、それが自分自身をケアすることにつながる。

 

セルフケアとは、気分転換や休息だけにとどまらず、その時間のなかで自分自身を見つめ直し、あるがままの自分を認め、自分自身を好きになっていくこと、すなわち自尊の感情を高めていくことと深く関係しているといえます。

 

 

 

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