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このサイトのライザーは全長683mで、第1固有周期は約36秒である。

Helland-Hansenサイトの測定システムは、図1に示す各位置に取りつけた合計6個の測定装置容器から構成されている。各容器は、海底側から順に1から6の番号で区別する。容器内には、運動測定用のセンサー、データ採集装置、および電池が入っている。メインのセンサーは加速度計で、水平面内の2本の直行する軸(X軸およびY軸)方向の加速度を測定する。容器3、4、6には、X軸とY軸に関する回転速度を測定するセンサーが追加されている。ノルウェー深海プログラムおよび渦励振の解析についての詳細は、Olufsen and Garside (1999)とHalse (2000)およびKaasenら(2000)に掲載されている。

以下では、加速度および回転速度の記録データから、ライザーの振動モードと横方向変位の計算を行なう方法について説明する。

 

重力による外乱

加速度計は、空間内で測定軸の方向が一定に保たれていれば、測定軸方向の加速度を正しく測定できる。この場合、測定軸に対する重力加速度の投影は一定なので、内部回路で補償したり、後の信号処理で取り除くことができる。ライザー上の任意の点では、水平方向の動きに回転運動が加わっているので、このような処理は不可能である。これは、回転によってライザーの中心線が垂直線から外れ、加速度計の水平度が失われて測定軸に重力が加わるためである。

以下の数式の導出においては、右手系の直交座標系を使っている。X軸とY軸は水平方向の軸で、Zは上向きの垂直軸である。ライザーが垂直状態のとき、X軸とY軸は、センサーの測定軸に一致する。

ライザーの静的および動的な傾斜角が微小であると仮定すると、傾斜角はX軸に関する回転ψとY軸に関する回転θにベクトル分解できる。水平方向の真の加速度成分をxとyで表すと、X加速度計とY加速度計からの信号は、重力加速度をgとして

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と表せる。

図2に、重力による外乱の影響を示す。図には、ライザーの1次モード応答に関して、L/4と3L/4の位置(Lはライザー全長)の加速度計の周波数応答特性が示されている。重力加速度の影響を無視して加速度計の信号を二重積分して求めた変位量は、特に低周波の場合に実際の値から外れることは明らかである。横方向変位量を求める際には、重力による外乱を加速度計の信号から取り除いたうえで二重積分する必要がある。これは、モード解析の手法を使って行なう。

加速度計は、振動モードの腹に位置する場合には重力の影響を受けないので、そのモードの変位量は加速度から簡単に求めることができる。したがって、問題とするすべての振動モードを、そのモードの振動の腹に置いた加速度計の測定値で表すことができれば、それらのモードの横方向変位も簡単に決まる。

 

 

 

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