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振動水柱(OWC)と振動体による波力吸収システム

海中に浸された複数の振動体と波浪との相互作用は、1970年代末にEvans[2]とFalnes[3]が個別に研究を行なっている。それに続き、圧力分布(空気圧式パワーテイクオフつきの振動水柱)のグループとの相互作用についてEvans[6]の研究がある。その数年後、振動物体および圧力分布(振動水柱)の両方について、数種類を対象とした研究がFernandes[7]とFalnes and Mclver[5]によって個別に行なわれている。

以下の式で表されるN個の独立した振動体からなる振動システムを考える。

N=Nu+Np (1)

ここでNuは振動物体の数、Npは振動水柱の数とする。各振動体が6つのすべての自由度(潮位の上下、横流し、ローリング(横揺れ)、ピッチング(縦揺れ)、ヨーイング(偏揺れ))について自由に振動できる場合、Nuは振動体の数の6倍になる。振動水柱の一部は固定構造物に取付けられ、残りは一組の振動体グループに属する浮遊構造に取り付けられている状態でもよいものとする。

すべての振動水柱は中空構造で、水面(水柱の上端面)を底とする閉鎖室内に一定量の空気が含まれているものとする。水面より上の空気は、空気圧式パワーテイクオフ装置(エアタービン、バルブなど)を介して外気と相互作用してもよい。振動水柱構造体の下端開口部は外側の水に通じ、振動水柱は波と相互作用する。水中に浸された物体と振動水柱の振動は、機械式、油圧式、または空圧式のパワーテイクオフ装置の変換エネルギーに利用することが可能であるが、本稿ではこれ以上、その件については言及しない。ただし、こうした装置を利用することにより、後に指定する制限の範囲内で、振動体ごとに任意の振動を与えることが可能であると考える。

すべての振動は共通の角振動数ωに対して調和性があるものと考える。さらに、波浪振幅とすべての振動体の振幅は、流体力学的相互作用が線形であると保証できるだけ小さいと仮定する。そして、波浪、物体速度、動的な力、空気の流れ、振動水柱構造内の動的な空気圧などが変換関数を関して線形の関係を持つものと仮定する。

振動システムの状態は、以下のN次の複素列ベクトルによって特徴づけられる。

042-1.gif

これを、「揺動振幅ベクトル」と呼ぶことにする。ここでuはすべての振動体の速度の複素振幅(最大で物体の6つの成分まで)を含むNu次元の列ベクトルで、pはすべての振動水柱内の空気の動圧である。(ここでは以下の数式で使われる時間変動係数eiwtを省略していることに注意)

入射波と放射波によって各振動物体に加わる波の力の合計は、Nu次元の列ベクトルの要素として表される。

 

 

 

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