付録II 興味深い論文の紹介
第10回海洋および極圏工学国際会議講演論文
アメリカ合衆国シアトル、2000年5月28日〜6月2目
Copyright©2000 海洋および極圏工学国際学会
ISBN 1-880653-46-X (Set); ISBN 1-880653-47-8 (Vol.1); ISSN 1098-6189 (Set)
物体と水柱から構成される振幅制限つきおよび振幅制限なしの揺動システムによる波力エネルギーの最大吸収量
J. Falnes
ノルウェー科学技術大学
Trondheim, Norway
摘要
複数の相互作用する物体と水柱から構成されるシステムによって、海洋上の波力から吸収されるエネルギーの理論上の最大値を、振幅制限なしの状態と、ある種の振幅制限が適用される状態について調べた。放射減衰行列が正則でない場合、その時点での最適振動が特異でなくても、非制限の最大吸収エネルギーは明確になることが示された。浮遊体内の軸対称のOWCシステムに関して、2種類の異なる制限が行なわれる場合についても調べた。
キーワード:最適振動、非正則の放射減衰行列
序論
複数の相互作用する物体から構成されるシステムによって海洋上の波力エネルギーを吸収する量を最大化する研究は、1970年代後半にBudal[1]、Evans[2]、Falnes[3]らによって行なわれている。Evansは、放射抵抗行列が正則、すなわち逆行列を持つことができると仮定できる場合に、振幅が制限されていないケースでの最適状態を証明する特に単純な条件を示している。
振幅制限が行われている場合には、分析的手法で調べることが可能な特に単純な問題以外は、数値解析を行なわなければならない。分析的手法による例としては、1981年のEvans[4]によるすべての物体に均一の振幅制限を行なった場合の例がある。この分析でも、放射抵抗行列は正則であると仮定されている。
本稿では、この分析と上述の単純な証明条件を一般化して、放射抵抗行列が正則でない場合にも拡張する。さらに、放射抵抗行列がエルミート複素共役型の放射減衰行列に置き換わった場合にも拡張を行なう。
後者の拡張を行なう理由は、複数の振動物体から構成されるシステムに振動する圧力分布のグループ(または振動水柱(OWC)と空気圧式パワーテイクオフ)が含まれた場合には、システムの放射減衰行列はエルミート複素共役行列となるためである[5]。