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・電子化されたクレーム書類を使った損害賠償請求

損害保険会社は、貨物に損害を与えた原因に輸送関係者のミスがあり、輸送契約書上で輸送関係者の過失が免責とされていなければ、保険金を支払った後、ミスの当事者に対する損害賠償請求権を保険金受取人から継承して、損害賠償請求手続きを行います。

この場合、電子化されたクレーム書類を使ってその行為・手続きが可能かという一番やっかいと思われる問題が発生します。電子化されたクレーム書類とともに、損害賠償請求権を保険会社が引き継いだ証拠書類としての権利移転書を省略もしくは電子データ化できるかといった課題です。

 

BOLEROやTEDIといった機関・組織を利用した電子化の場合やある特定の荷主・輸送会社・保険会社等あらかじめ該当者が決まっているような場合は、全当事者であらかじめ合意しておけば、これらの書類でも損害賠償請求に関しては問題はないはずですが、訴訟となった場合は別になると考えた方がよいでしょう。

訴訟提起手続き上で電子化された書類を裁判所が認めるか否かは、国によって大きく異なることが充分予想できます。現在でも訴訟手続きは、国によっては複雑かつ他国には理解できないようなこともあり、そう簡単に認められるようになるとは考えられません。

 

今のところは、電子署名などは考えられるような状況には思えません。(例:メキシコ合衆国においては、訴訟には、保険証券のORIGINALを必要としています。)

また、コンテナ化が進むに従って、複合輸送契約が多くなり、この場合は、BOLERO、TEDIといった機関・組織を利用していない当事者に損害賠償請求することになることもあり、事前の合意が意味をなさないことも多いでしょう。損害賠償請求は、争い事ですので、請求される方は、何だかんだと書類を要求してくる場合も多く、また、訴訟にならずとも、その交渉はスムーズにいかない恐れがあります。この場合は、書面を新たに準備する(保険証券を発行する)ことによって解決するなどの対応策で解決するしかありません。折角データ化したにも係わらず、手間が減らないといったことになります。また、第三者によって引き起こされた事故が原因で貨物に損害が被った場合など(貨物を運んでいる船に他の船が衝突した結果運んでいた貨物に損害が生じた場合など)は、第三者に損害賠償請求することになり、この場合も同じような問題が発生します。

各国の法律・習慣および裁判制度に大きく左右されますので、詳細な検討が要求されています。

 

・電子化による損害査定代理店の業務への影響

損害査定代理店が作成する鑑定書(サーベイ・レポート)も電子データ化しないと、一連の電子化は進みません。現状では、タイプ打ちのレポートからパソコンを利用したレポートが次第に増えてきています。

 

 

 

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