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2.5 海外クレームの処理

 

クレーム処理を行うに当たり、照査や証拠資料として採用される書類が電子化された場合の有効性、証拠能力についての評価が課題となります。

輸出の場合、クレームの処理は、海外で行われますが、その際、保険会社から委嘱を受けたクレームエージェントが実際には処理します。これらのクレームエージェントに電子化された書類(データ)をどのように提供するのか。海外の各国において、実際対応が可能なのか等々整理する必要があります。また、各国の状況が異なる現時点では、簡単に解決できるようには思えません。

 

海外クレーム処理についてを中心に、以下に項目毎に整理してみましょう。

 

・電子化されたクレーム書類の有効性と証拠能力

電子取引を行う当事者間においては、あらかじめ電子データの有効性や証拠能力に関し合意しておけば問題は解決できると考えます。しかしながら、貿易実務では、貨物の荷主が変わっていく、すなわち輸送途上で、書類で転売されていく場合がよくあること(被保険者=保険金を受け取る権利を持つ人が当初の当事者と変わる可能性があること)。また、有無責等で保険金支払いに関し、もめた場合などには、訴訟問題になることも充分考えられることから、各国の状況にもよりますが、電子データの有効性・証拠能力が国際的に公に認められていなければ、当初の当事者以外への電子データの有効性は疑問と言わざるを得ないでしょう。

もちろん、転売されるケースばかりではありません。実際にはかなりの量の貨物が、現地法人等自社の関連会社に輸出されていますが、この場合は、すでに、データでクレームを処理している例もあります。

売買契約上で保険の内容を明確にしておくことによって、トラブルを避けることも一つの解決策と考えますが、完璧とは言い難く、慎重な判断、対応策等が必要かもしれません。課題は依然解決されていませんが、全世界が電子データ化するわけではないので、徐々に進めていく過程で解決していくことになるのではないでしょうか。

 

・電子化されたクレーム書類の損害保険査定代理店への提出

損害保険会社は、海外で発生するクレームを迅速に処理すべく、世界各地に損害査定代理店を設置して顧客サービスの充実に努めています。保険金請求者から事故通知を受けた損害査定代理店は、立ち会い調査を行い、損害状況・原因の把握と損害額の算出をして、サーベイレポートを作成します。

 

 

 

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