4.1 電子的な取引の有効性
そもそも電子的な取引は法律上有効なのか、という問題がありますが、この問題は、相当程度解決されていると思います。
各国の法制との兼ね合いも残っていますが、Identrus、SWIFT、Boleroとも、予めルールを定めておき、参加者はこのルールに従うことで、すなわち当事者間の契約として、解決しようとしています。信用状の様な書類も、同様の方法で解決可能と考えています。
4.2 電子的な船荷証券の効力
電子的な船荷証券(以下「電子船荷証券」と言います。)の効力は、紙の船荷証券(以下単に「船荷証券」と言います。)の効力とは異なります。
船荷証券は輸出者と運送人との間の貨物運送契約に基づき、運送品が船積みされた時に運送人により発行される有価証券であり、運送品の引き取り又は運送途上における運送品の譲渡のためには船荷証券の呈示、交付を必要とされています。
船荷証券を発行した場合には、運送品の処分は証券をもってしなければならないとされ(商法573条)、さらに、船荷証券により運送品を受け取ることができる者に証券を引き渡した場合には、その引き渡しには運送品の引き渡しと同一の効力が認められています(同法575条)。
これらの法律を基礎として、例えば銀行が輸出手形を買い取る際に、船荷証券を担保として預かっておりさえすれば(法的には譲渡担保と解釈されています。)、万一第三者が、実は私の貨物だと主張するようなことがあっても、銀行は、法的に保護されることになります。
電子船荷証券には、このような法律の保護が及びませんから、例えば輸出者の債権者が貨物を差し押さえるようなことがあった場合、銀行は保護されない懸念があります。ただ、この問題は、各国の法制に関わる問題である故に、短期間で解決することは困難だと思います。
当面は、銀行としては、与信を行う際のリスクとして割り切る、割り切れる取引先に対してのみ電子船荷証券を担保とする買い取りを行う、ということしか無いのではないかと考えています。