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荷渡しの際もコレクトであれば運賃や諸chargeの入金の確認をおこなってから荷渡しを行うので、発行の場合と同様に入金の確認とD/Oの発行がリンクするようなシステムになれば省力化になり、船会社にとっては大きなメリットとなります。

 

2.2.1 L/G荷渡しの減少

更にL/G荷渡しの問題があります。紙のB/Lの場合には船の高速化に伴いdeliveryの際にB/Lが間に合わない為、B/Lを提出して引渡を行うのではなく、受け荷主から銀行の連帯保証状をとって荷渡しを行うことが慣習的に行われてきました10。船会社は何らかの理由で受け荷主がB/Lを入手できず、B/Lの所持人から訴えられた場合には契約違反及び横領の責任を負わざるを得ません。船会社はL/Gに基づいて受け荷主に求償することになりますが、このL/G自体の効力についてもこれを無効とする国もあり、船会社は大きなリスクを負っています11

この船荷証券の危機に対する方法の一つとして海上運送状が用いられています。海上運送状の利用は広がってきてはいるものの、B/Lと違い流通せず、担保力も無い為、権利移転が前提となる銀行を経由した取引には使いにくく、12その流通には自ずから限界があると考えられます。

 

電子B/Lを用いた場合には、紙のB/Lの場合と違って電子的にデータが流れていくので、本船の仕向け地到着までB/Lが到着しないという事態が起こる可能性は長期的には少なくなると考えられ、船会社のリスクも小さなものになると思われます。13又これは、荷主サイドにとってもL/G発行の手間が省ける為、省力化になると思われる。

 

2.2.2 荷渡し手続きの省力化

上述のとおり現在考えられている電子B/Lのシステムにおいては、電子B/Lを船会社に提出することによって荷受人が荷物を受け取る権利を獲得するところまでしか規定しておらず、電子B/Lを提出してから実際に荷物を引き渡すまでの手続きは運送人に委ねられています。実際には船会社はDelivery orderを発行し、荷主の代わりに海貨業者が船会社のターミナルでD/Oを引換えに荷物を引き取るといったことが行われています。

 

D/Oは慣習的に船会社が発行してきた書類で、法律で要求されているわけではないので、ターミナルでmis-deliveryを起こさないような方法であればどのような方法を用いてもかまいません。上述の通り既に国内でもD/O廃止の動きが始まっていますが、ターミナルでの荷渡しの時点までオンラインで情報が流せるようになれば、さらに省力化につながるのではないかと思われます。

 

(入来院隆昭)

 

10 「船荷証券の危機」などという表現をされる。新堀聡「貿易取引入門」日本経済新聞社1992年215頁

11 新堀 同上220頁

12 但し信用状統一規則(UCP500)では海上運送状もL/Cを用いた取引に使用できることを謳っており(UCP500 Art.24)、また船会社もSea Waybillの荷受人欄に銀行を記載し、荷主が運送品処分権を放棄することをWAYBILL上記載することでL/C取引に利用できるとしていて(「SEAWAYBILLご利用のすすめ」前掲 注68頁)、使用するための仕組みはできている。

13 但し、B/Lが電子化しても他の書類が紙で残ったり、あるいはL/Cとのdataの照合を人手をかけずに行うシステムが整わなければ額面通りの効果が期待できない可能性があり、B/Lを電子化したからといって即それがL/G荷渡しの減少につながるとはいえないと思われる。

 

 

 

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