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VI. 電子商取引の船会社にとっての実務上の問題点とメリット

 

電子B/Lの問題点については既に何度も取り上げられていますが、その中で、荷渡しの手順についての実務上の問題点と、電子B/Lを取り入れた場合の船会社のメリットについて何点か記述してみました。

 

1. 荷渡しに関する実務上の問題点

 

電子B/Lの場合は倒産、差し押さえ等により、電子B/Lの契約者以外の第三者が引渡を請求した場合の法律関係については不透明な部分が残っているが、その問題が無いと仮定して(電子B/Lの権利者に荷渡しする場面を想定して)どのような問題があるか考えてみます。

 

紙のB/Lの場合は荷主が荷渡しの時にB/Lを提出し、運送人は裏書きの連続を確認し、Delivery Orderを発行します。荷主はDelivery Orderと引換えに荷物の引渡しを受けることになります。この場合運送人は悪意又は重大な過失が無い限り証券の所持人が正当な権利者でなくても免責されます。(免責証券性民470条、471条)

 

電子B/Lの場合、現在は電子B/Lの提出により荷渡しを受けることができることまでは決められているが、実際の荷渡しの手順については規定しておらず1、運送人に委ねられています2

一方電子B/Lの場合には現在の荷渡しの実務に即して考えると電子B/Lと引き替えに紙のD/Oを発行することになるが、B/L自体と引換えにD/Oを発行することはできないので、(紙の)D/Oを発行する場合には海貨業者が電子B/Lをsurrenderした人の委託を受けている事の確認を何らかの方法で行う必要があります3

 

もし誤まって第三者に対してD/Oを発行した場合、電子B/Lは当事者間の契約でB/Lを機能的に代替しており、証券に適用されるこれらの規定の適用が無い。もし債権の準占有者に対する弁済に関する民法478条が適用になるとしても、民法478条の適用には債務者の善意無過失が必要であるとされており4、どのような手順を用いれば無過失とされるかは現時点では明らかでなく不安定な立場におかれます。従ってB/Lの場合と違いより慎重な対応が必要になると考えられます。

 

1 Boleroのoperating procedureの解説には以下の通りの記述がある。

"In general though, the Carrier will want to satisfy itself that it is delivering to the correct party. The Bolero Rulebook does not prescribe the steps that the Carrier and surrendering User should follow to that end." Appendix to Bolero Rule Book Operating Procedure P85

2 例えばBoleroの場合はTitle Registryのstatusを代えることによりB/Lがsurrenderされるが、surrender後の実際の荷渡しの方法は港毎に慣習的に大きく異なっていることを理由にあげている。Appendix to Bolero Rule Book Operating Procedure P85

3 又deliveryの都度personal identificationの方法を確認するのは実際的でない為、何らかの方法を事前に定めて荷主との間で合意しておく必要があろう。

4 最高裁判例昭37年8.21民集16-9-1809

 

 

 

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