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従って、仮にHAGUE VISBY RULESが、“by reference”で摂取されていても、SEA WAYBILLの約款に、明示の文言で、例えば、

 

・「貨物が滅失・損傷した場合も、運送人自身の故意又は重過失によるもので無い限り、運送人は責任を負わない。」という規定や、

・「運送人の責任限度は、SEA WAYBILL上の貨物明細の記載方法に拘わらず、1コンテナ当たり、1万円とする。」という様な規定が有った場合、そちらの特約が優先し、その範囲で、HAGUE VISBY RULES摂取の効果は減殺されることにもなるでしょう。

 

即ち、SEA WAYBILL上の運送契約の準拠法が、(我国の「国際海上物品運送法」の様に、)SEA WAYBILLによる運送にもHAGUE VISBY RULESが適用されるとしている場合でない限り、HAGUE VISBY RULESを幾ら摂取しても、SEA WAYBILL約款に同RULESに反する趣旨の明文の規定を入れることにより、HAGUE VISBY RULESは簡単に回避出来ることになります。

 

その様な点を考慮する必要から、運送人は、他の船社のSEA WAYBILL約款にも注意を払っています。何故なら、船社が、他の船社をSUB-CONTRACTORとして使用し、他の船社のSEA WAYBILL上の荷送人となるケースもしばしば有りますので、その様な場合、注意しておかないと、例えば、次の様な羽目に会いかねないからです。

 

・自社は、荷主に対して、船荷証券を発行する。(従って、HAGUE VISBY RULES上の義務を負う。)

・もし、下請運送する他の船会社が発行するSEA WAYBILL運送契約中に、HAGUE VISBY RULESによる運送人の義務を免責又は軽減する規定が有ると、

 

貨物損害が、下請運送人の管理下で発生したものであるにも拘わらず、上記二つの責任原則の差異を総て引被る結果にもなる。

 

船荷証券以外の書類(SEA WAYBILL等)で、運送した場合の当該書類中の特約規定とHAGUE VISBY RULESとの関係に就いては、英国判例を幾つか読んだことが有りますが、最も記憶に新しいところでは、1989年英国Queen's Bench Division判決“The European Enterprise号事件”辺りでは無いでしょうか。

 

 

 

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