同法は、HAGUE VISBY RULES を批准・国内法化したものであるにも拘わらず、適用範囲を広げ、“船荷証券が発行されていると否とに関わり無く”「船舶による物品運送で船積港又は陸揚港が本邦外にあるもの」に適用されます。しかし、我国の「国際海上物品運送法」の様な規定の仕方をしている国は、むしろ例外に属しますから、上記の様な注意は欠かせません。)
(2) SEA WAYBILLへのThe Hague Rulesなどの摂取の効果に注意が必要
HAGUE (VISBY) RULESは、その文言上も、成立経緯上も、本来「船荷証券又はこれに類似する権原証券」が発行される運送契約に適用されることになっており、
従って同条約正文をそのまま批准・採用している国のHAGUE (VISBY)立法の場合、SEA WAYBILL(上の運送契約)には法律上当然には適用されないのは上記の通りです。
そこで、SEA WAYBILLによる運送契約を、HAGUE (VISBY) RULESに沿った形にする為には、当該運送契約にHAGUE (VISBY) RULESを摂取する必要が有ります。
この摂取の方法としては、(SEA WAYBILL紙面の制約の為、条約全文をそのまま摂取する訳にも行かない等の理由で)普通、by reference (例えば、「Hague Visby Rulesに依る。」等の記載方法)によって行われることが多い様です。
この様に契約の1条項として摂取されたHAGUE (VISBY) RULESは、前述の通り、法律上当然に適用されるものではなく、従ってby force of lawで適用されるものではなく、単に契約条項の1つ、数ある契約約款の中の単なる約款の1つに過ぎません。
従って、同じSEA WAYBILL上の他の約款との整合性、他の条項と矛盾する場合、どちらの条項が、優位に立つかのという契約解釈の問題が生じます。
(この様な「当該契約の他の条項」と「摂取された法律・条約・他の契約からの条項」との関係に関する契約解釈に就いての問題は、傭船契約船荷証券8等でもしばしば問題となるところです。)
“by referenceで摂取された条項”と“他の明示の規定”とが矛盾する場合、契約文言に表示された当事者の意思を如何に解釈するべきかの問題が生じますが、包括的に“BY REFERENCE”によって摂取された規定よりも、より明確に当事者の意思を表すと思われる「明示の規定が優位に立つ。」と考えるのが、契約解釈としては、自然である様に思われます。
8 「傭船契約船荷証券」:傭船契約に基づいて発効された船荷証券。多くの場合、傭船契約の規定が、船荷証券上に摂取され、船荷証券上の運送契約の一部を構成することになる。その為、傭船契約上の特定の規定が摂取されたと見るべきか否か、摂取された規定と船荷証券の他の規定とが矛盾する場合、如何に解釈するかなどを巡って判例も多い。