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従って、電子化に際しては、船荷証券の方が難しい問題を多く含み、紙の船荷証券の等価物としての電子船荷証券を作るために、ルールに種々の工夫を凝らす必要が有るのに対し、SEA WAYBILLは、(単なる運送契約の証憑に過ぎませんから、)電子化は寧ろ容易であると思います。

(尚、SEA WAYBILLの場合にも、上述した「荷受人などの地位」の問題を如何に構成するかの問題が有るのは同様です。)

 

2.2 紙のSEA WAYBILLの等価物としての電子SEA WAYBILLを考える場合

 

紙のSEA WAYBILLの等価物としての電子SEA WAYBILLを考える場合、電子船荷証券とは、例えば、次の様な点に差異が生じることになるでしょう。

 

(1) Hague Rules6やHague Visby Rulesが当然には適用されない。

本来、これらの規則(国際条約)は、船荷証券ないし同様の“document of title”を規制の対象としており、従って、契約の証憑に過ぎないSEA WAYBILLには、当然には適用されることにはなりません。

従って、それらの規則の強行法規7としての規制を免れ、契約内容を自由に決められる余地が有る反面、同規則から大きく離れた予期せぬ契約条項が含まれることになる可能性も有ります。

 

従って、SEA WAYBILLの運送契約を、それらの規則に沿ったものにする為には、それらの規則を、“契約の条項”として、上手に摂取する必要が有ります。

(尚、この点に関しては、我国の「国際海上物品運送法」は、例外的な存在です。

 

6 「Hague Rules」:「船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約」(船荷証券統一条約)のこと。

海上運送人の免責約款の制限、受取船荷証券の取扱い、船荷証券上の記載の証拠力などを定めている。“Hague Visby Rules”とは、1924年の船荷証券統一条約を改正する為の1968年議定書により改正された船荷証券統一条約のことを言う。我国の現行「国際海上物品運送法」は、Hague Visby Rulesを、国内法化したものに相当する。

7 「強行法規」:当事者が欲すると否とに拘わらず適用される法規のこと。Hague RulesやHague Visby Rulesは、その中の一定の規定に反する契約条項で、運送人の責任を軽減することになるものを無効とする規定を含んでおり、その意味で「契約自由の原則」を制限する「強行法規」である。

 

 

 

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