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1.5.2 “DELIVERY ORDER”の多義性

海上運送人の言う“DELIVERY ORDER”は、上記の意味ですが、同じ“DELIVERY ORDER”という言葉で表現されているものにも、以下に述べる様に、さまざまなものがあり、文脈を良く弁えておかないと誤解のもとになります。

(a) 物品の所有者が、運送人または倉庫業者などの物品保管者にあてて、その正当な所持人に対し、そこに記載された物品の引渡しを依頼する証券。

(b) 物品の保管者が、その保管する物品を証券の正当な所持人に引き渡すことを約する証券。

(c) 物品の保管者、たとえば運送人が、物品保管者の代理人、たとえば船長やコンテナ・ターミナルにあてて、その保管する物品の全部または一部を証券の正当な所持人に引き渡すことを命ずる証券。

(d) 運送品の所有者が、物品保管者でない者、たとえば荷揚港における代理人に宛てて、その正当な所持人に対し、そこに記載された物品の引渡しを命ずる証券。

などです。

 

1.5.3 “DELIVERY ORDER”の性質

通常、次の3種のものに分けて論じられている様です。

 

1] 船荷証券と引換えに運送人が発行する履行補助者宛てのもの。

2] 船荷証券の所持人が運送人に宛てて発行し、運送人が副署しているもの。

3] 船荷証券の所持人が運送人に宛てて発行したもので、運送人の副署のないもの。

 

(性質)

― いずれも、免責証券であることには、学説・判例に異論は無い様です。

― いかなる権利を表章しているかに就いては、1]2]は、貨物引渡請求権を、3]は、その所持人に対する物品の受領資格ないし受領権限を表章していると言われている様です。

― 「有価証券」で有るか否か(「有価証券性5の存否」)に就いては見解が分かれている様ですが、多数説は、1]2]については、有価証券性を認め、3]については、否定している様です。

判例も、3]については、有価証券性を否定している様です。

 

5 「有価証券性」:財産権を表章する証券であって、その権利の利用(移転、行使)が証券をもってされることを必要とするもの。権利と証券とを結合することによって、権利の行使を円滑安全にするとともに、権利の流通性を高める制度であるが、移転・行使の態様及び権利と証券との結合の程度は種類によって一様ではない。

 

 

 

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