1.2.2 電子船荷証券の場合の荷渡し
上記の様な紙の船荷証券の場合に対し、電子船荷証券の場合、貨物荷渡しの場に存在するのは、パソコンの画面に現れた「現在の権利者=Aさん」という電子情報のみですので、貨物を受け取りに来た者が、Aさん(ないしその代理人)であるか否かの確認に非常に注意を要することになります。
また、実際にMIS-DELIVERYが発生した場合、
・運送人に軽過失しか無かった場合にも、運送人は、賠償責任を負うのか?
・「注意義務を尽くせば」、免責されるのか?
・如何なる権利者確認方法を実施すれば、「注意義務を尽くした。」と見なされるのか?
などが問題となるでしょう。これらの点が、不明のままでは、運送人は、権利者の確認
に、いよいよ慎重にならざるを得ず、場合によっては、迅速な処理に支障を来たすこと
さえ考えられます。
何らかの形で、明確な基準が示される必要があるのではないかと思います。
1.3 電子船荷証券の「紙の船荷証券への変更」と、その引渡しの際の危険増大の可能性
電子船荷証券が、流通の過程で紙の船荷証券に変更される場合も、注意を要するでしょう。電子船荷証券の流通過程の最後の権利者を特定し、紙の船荷証券を作成して、間違い無く引き渡す必要が有りますが、この場合も存在するのはパソコンの画面に現れた「現在の権利者=Aさん」という電子情報のみであり、しかも、多くの場合、その権利者は、運送人にとって未知の、且つ、遠隔地にいる方でしょうから、その方の特定には慎重を期す必要が有ります。
運送人にとっては、その方の特定に、荷渡の時と同様の危険が伴うことになります。
1.4 船荷証券以外の船社側書類の電子化
運送人が発行する船荷証券以外の書類の電子化の問題に就いても、少し触れておきましょう。