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MIS-DELIVERYの結果、運送人が真の権利者に対して、賠償責任を負うことになる事態を心配しての警告です。

 

1.2.1 紙の船荷証券・荷渡指図書の場合

紙の船荷証券が発行され、それが差し入れられて、それと交換に紙の荷渡指図書が発行され、又それと交換に貨物が引き渡される様な形態の下では、実際上、MIS-DELIVERYはまず発生しません。

何故なら、

(a) 船荷証券と「指図債権の債務者の保護」の制度:

紙の船荷証券が差し入れられ、交換に紙の荷渡指図書を交付される場合、当該船荷証券を持ち込んだ者が、真の権利者であるか否かに就いて確認を要することになりますが、この場合、「指図債権の債務者の保護」の制度が働き、この確認は、実際上、裏書の連続性の確認さえすれば済むことになります。

(参考条文)

民法470条

「指図債権の債務者は、その証書の所持人及びその署名、捺印の真偽を調査する権利を有するもその義務を負うことなし。

但、債務者に悪意又は重大なる過失あるときはその弁済は無効とす。」

 

(b) 次に、紙の荷渡指図書と交換に貨物が引き渡される際にも、荷渡指図書を持ち込んだ者が、実際の権利者か否かという問題が存在しますが、荷渡指図書は、

「免責証券」2とされていますので、ここでもMIS-DELIVERYに伴う運送人の責任という問題はまず発生しません。

この様な「債務者(運送人)保護の制度」により、運送人は、大量の貨物を迅速に処理することが可能となっています。

 

2 「免責証券」:債務者が証券の所持人に弁済すれば、所持人が正当な権利者でない場合でも、悪意或いは重大な過失が無いかぎり、債務を免れる効力のある証券のこと。例えば、下足札、鉄道手荷物引換証、銀行預金証券、本船受取証などがその例です。特定人間の債権債務関係に関する証拠証券に、債務者の利益のために免責力を認めたものであり、権利を表章するものではないから、有価証券ではなく、従って、免責証券の譲渡ということは考えられず、又、所持人が権利者と推定されるのではないから、証券を所持しているからといって、当然に弁済を請求できるわけではないとされています。但し、多くの有価証券は、同時に、免責証券でもあります。

 

 

 

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