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V. 船会社から見た電子船荷証券に関わる課題

 

1. 電子船荷証券に関する問題

 

紙の船荷証券の電子化に関連する多くの論点に就いては、昨年度の報告書等で既にかなり触れましたので、今回は、以下の問題に的を絞って論じます。

 

(1) 運送契約上の「荷主の義務」と荷受人ないし船荷証券所持人の立場。

(2) 紙の船荷証券が無くなることに伴う荷渡の際の危険増大の可能性。

(3) 電子船荷証券の「紙の船荷証券への変更」とその引渡しの際の危険増大の可能性。

(4) 船荷証券以外の船社側書類の電子化。

(5) 「荷渡指図書=DELIVERY ORDER」に就いての考え方の整理。

 

1.1 運送契約上の「荷主の義務」と荷受人ないし船荷証券所持人の立場

 

従来、電子船荷証券に関連して、その移転に伴う運送人に対する運送契約上の「荷主の権利」や、物権的効力など「権利の移転」を中心に論じられて来ましたが、「運送契約に基づく荷主側の義務」の部分は余り省みられなかった様に思います。

船荷証券は、荷送人と運送人との間で締結される運送契約に基づいて発行されますが、この運送契約上の(荷送人の)「運送人に対する義務」に関して、

荷受人ないし船荷証券所持人は、どの様な立場に有るのでしょうか?

 

1.1.1 日本法では

日本法の下では、船荷証券とは、運送契約に基づく荷送人の権利(貨物引渡請求権など)を有価証券化したものであり、従って、船荷証券の移転に伴って移転されるのは、運送契約から生じる荷送人の権利のみであるとされています。

このような考え方の下では、船荷証券の移転に伴い、運送契約上の義務が、荷受人や船荷証券所持人に移転することは有りません。

従って、この様な法制の下では、船荷証券の移転に就いて論ずる際、運送契約上の義務に就いて気に掛ける必要は余り有りません。

ところが、この様な日本法の考え方は、必ずしも世界共通な考え方では有りません。

 

荷受人や船荷証券所持人が、恰も運送契約の当事者であるかの様に、運送契約上の義務を負うに到るとする法制も有るのです。

 

 

 

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