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第2部 各論

 

IV. 荷主の立場からみた貿易電子化

 

1. 荷主の貿易業務の現状と電子化の必要性

 

SCMを中心とする貿易業務のあり方の変化と、電子化の必要性を説明します。

昨年度までの報告書でも述べているとおりですが、荷主の貿易業務が大きく変りつつある、という認識を持つかどうかが議論のスタート台となると思いますので、改めてポイントを纏めておきます。

銀行、保険、運輸の各業界からもそれぞれ現在の業務上の問題点や、逆に電子化した場合の問題点が提起されていますが、荷主業界における問題点を整理しますと、

 

1.1 現在の業務の問題点

 

1.1.1 船荷証券の危機

20年ほど前から、船舶の高速化・大量輸送に伴い「船荷証券の危機」(B/Lクライシス)と言われる現象が生じました。それは船舶が高速・大量小口輸送が可能となったにもかかわらず、紙の船荷証券が揚げ港にタイムリーに届かない事を指しています。その結果、受け荷主は船会社に保証状を差し入れて貨物を受け取る商習慣が形成されました。危機に拍車をかけた理由として、船荷証券の特性、特に受け戻し証券性(船会社は船荷証券所持人に引き渡して責任完了を主張でき、荷主は船荷証券が無いと貨物を請求できない)が輸送技術の進展にキャッチアップできなかったことがあげられます。

この危機を打開するため関係者、特に荷主は様々な対策を考えました。

1] 船荷証券等の直送…信用状に(複数通発行される)船荷証券の一通を直接受荷主に送るよう指図する文言を挿入する方法です。厳密には、この方法が取られると銀行は船荷証券という担保無しに決済を行うことになるので、誰にでもこのような文言を挿入させる事には躊躇するでしょう。

2] 船荷証券の元地回収…いったん発行された船荷証券を積み地で船社に差し戻す。これらは船荷証券本来の機能(特に請戻し証券性)を活用しないことで処理の迅速化を追及したものです。それなら船荷証券である必要は無いことになるので、

3] シーウェイビル(SWB)の利用…CMIが提唱し、わが国でも(財)日本貿易関係手続簡易化協会、船主協会、荷主協会等で啓蒙普及の宣伝を行ったが、親子間取引等を除くと余り普及していないようですが、某船会社によると日本から先進国向けの6割がSWBに切り替わっているとのことです。

 

 

 

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