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Boleroと同様、紙の船荷証券の場合は本来曖昧であるはずの問題について、敢えてこのようなきちんとした答えを出す(区分けをする)ことについては、理論的な評価の分かれ得るところでしょう。

 

なお、義務の問題とは異なりますが、TEDIでは、Possessorが別途指定したTitle Holder、Interest Holderがあるとき、それらHolderが引渡を受ける権利はどうやって確保されるのかが書いてありません。TEDI Interchange Agreementのみの枠内では、既に触れたように、その2.6において、Possessor、Title Holder、Interest Holderの全資格を併有して初めて引渡請求可と規定され、むしろ否定されてしまっています。この点は2.3.2で説明したとおり、物権的権利で行くということのようです。しかし、それは妥当とは思われないこと、担保権者たる船荷証券所持人が権利行使する場合でも運送契約上の規律を援用したくなることはあり得ることは、やはり2.3.2で論じたとおりです。

 

4. 結語にかえて

 

筆者はかつて船荷証券の電子化のプロジェクトに関係している某氏(法律家ではありません)から、「船荷証券の電子化というのは、要は電子封筒屋なのだ」という見方を聞いたことがあります。現象面から見れば、従来は、船荷証券という紙が、関係者(先に挙げた典型例で1]2]3]4]5]1])の間を、他の貿易関係書類とのデータの整合性をチェックされつつ、また決済等と条件付けられつつ、流れていった訳で、これを電子的な船荷証券情報のデータ交換として実現していくのが、船荷証券の電子化であると考えれば、これは実にわかりやすい比喩です。一般にシステム化というのは、業務フローを分析し、それを電子化・自動化していくのですから、船荷証券の電子化をシステム開発者の観点から見ても正にそうでしょう。

しかし、当然のことながら、流れていく船荷証券というのは、ただの情報の詰まった紙ではありません。関係者間で複雑に法律関係を発生・変更・消滅させていく証券です。船荷証券の電子化にあたっては、関係者がこの点を十分認識・分析したうえで法的枠組を設計することが必要であるように思われます。

 

(池山明義)

 

 

 

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