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しかし、何らかの形で(Boleroのシステムの範囲外で)偶々Holder-to-order等が判明すれば、差異がやはり生じます。そして、実務的には、おそらくBoleroの電子式船荷証券においても、最終的な荷受人が誰になるか全く分からないということでは種々不都合だとして、紙の船荷証券におけるNotify Party的なものが存在し続け(正確に言えば運送人がその記載を残し)、それは少なくとも最終的な荷受人予定者として想定されるため、運送人はその者に照会可能で、そうすればその者は自分が予定どおりHolder-to-order等になっていればウソは言えず、結局判明する場合が多いのでは、との推測も成り立ちえます。何れにせよ、紙の船荷証券の場合は本来曖昧であるはずの問題について、敢えてこのようなきちんとした答えを出す(区分けをする)ことについては、理論的な評価の分かれ得るところでしょう。

 

TEDIはどうでしょうか。TEDI Interchange Agreement 2.4(a)(i)及び2.5(b)(i)/(ii)では、単純にPossessorは運送契約上の権利のみならず義務までも承継されるとあります。それでは特に船荷証券の流通の途中に位置する、3]買取銀行、4]信用状発行銀行としては困ります。そのためか、同Agreement 2.4 (a)(ii)/(iii)は、Possessorとは別に、Title Holder、Interest Holderという範疇を提供しています。彼らは、運送契約上の権利義務は何ら取得せず、貨物に対する物権的権利だけを取得する存在です。上記3]4]は、流通過程でこれに指定されるということのようです。これを指定できるのはPossessorのみとされます42。ただ、現Title Holder、Interest Holderが、次のTitle Holder、Interest Holderを指定できないというのは如何にもおかしいので、この点を否定する趣旨ではないと解されます。そして、貨物の引渡を請求するには、Possessorは、一旦Title Holder、Interest Holderが指定された場合であれば、その地位をも併有して初めて貨物引渡を請求し得るとされていますので43、実務的には、5]荷受人は、4]信用状発行銀行から、決済を済ませてTitle Holder、Interest Holderの地位を引き継いで初めて貨物引渡を受けられるということになり、3]4]の5]荷受人との関係での利害はそれなりに守りつつ、彼らが運送契約上の義務を負うことはないよう構成されていると言えます。問題は、5]荷受人はPossessorとなった時点ですぐ義務も負ってしまうということですが、これがどの程度本当に問題かも、Boleroにおいて述べたとおり、現時点での荷受人は誰かを 1]運送人は知り得るか(その点についてのShipment Information Table上の情報を知り得るか)によることになります44

 

42 TEDI Interchange Agreement 2.5 (a)

43 TEDI Interchange Agreement 2.6

44 筆者の理解し得る限り、TEDIではこの点ははっきりしません。TEDI Repository Service Terms and Conditions 3.6にはDisclosure and Confidentialityの規定がありますが、Shipment Information Tableの途中でのCarrierへの開示の有無は、明記されていません。

 

 

 

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