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これに対し、TEDI Interchange Agreementでは、船荷証券約款自体には触れられておらず、その 2.4(a)(i)、2.5(b)(ii)が、Possessorになる者は運送契約上の権利義務を承継するのだと一般的に謳うに留まります。船荷証券約款は、法的に言えば運送契約の権利義務の詳細を定めるものですから、TEDIのこの決め方は、結局、Possessorになる者は運送人の船荷証券約款に拘束される、とあっさり謳っているのと同じであり、その意味で第二の方式をさらに単純化したものと言えます。従って、前段でBoleroにおいて問題の余地ありと指摘した点はやはり同様にあてはまります。なお、TEDI Interchange Agreement上は、船荷証券所持人に相当するPossessor達(特に筆者の想定する典型例で言えば1]運送人と直接の契約関係を持たない3]4]5])が、船荷証券約款の内容をどこでどうやって知れば良いかの取っ掛かりが全然規定されていない(論理的には運送人に適宜聞けということでしょう。)という意味で、法的にはBoleroよりさらに問題が大きいように思われますが、他方、TEDI Repository Service Terms and Conditions 3.4.によれば、Repository Service Providerは、利用者が関係約款にアクセスするためのTerms and Conditions Repositoryを設けるべきことが謳われており、実際には、船荷証券約款に相当するものは運送人により当該Repositoryにアップロードされ、Possessor達はそれにアクセスするという形態が想定されているようですので、結論的にはBoleroより更に問題大とは言えぬと考えます。

 

3.2 事実に反する船荷証券の記載の所持人に対する効力

 

わが国の国際海上物品運送法第9条は「運送人は、船荷証券の記載が事実と異なることをもって善意の船荷証券所持人に対抗できない」と規定しています。電子式船荷証券の場合、この点はどうなる(べき)でしょうか。

理論的には、答はやはり取り敢えず簡単です。電子式船荷証券の法的枠組を定める契約次第です。当該契約で同趣旨を入れればそうなるというだけのことです。

但し、実は、上記条項の趣旨をそのままいれるような単純な対応は、おそらく正しくありません。実は、上記条項は、あくまでも日本法の規定32に過ぎず、世界各国の法制・あるいは国際条約がこれで統一されている訳ではないからです。例えば、Hague Rules Art.3 Para.4は、この点につき、貨物の主要な記号、数量、容積・重量、外観上の状態についての船荷証券上の記載は事実と推定される(prima facie evidence33である)旨規定しており、Hague-Visby Rulesでは、これに、但し善意の船荷証券所持人との関係では対抗できない(反証を許さない)旨の追加がされており、これらは、国際海上物品運送法の上記規定とも重なり合ってはいますが、対象となる記載事項が狭く、Hague Rulesの場合は、常に事実推定(prima facie evidence)か、善意者への対抗不可かという効果でも違います。

 

32 そもそも本条も平成4年改正前はやや異なっていました。

 

 

 

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