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これは、以下に述べるとおり、理論的にはある意味で簡単です。

電子式船荷証券の場合も、理論的には、まずは紙と同様の形が考えられます。運送人から荷送人への最初の「発行」時、あるいは、その後の荷主・金融機関等の間における「裏書譲渡」時に、いわゆる船荷証券表面の記載事項に相当するデータのほかに、裏面約款のデータも全て電子的に送られるようにするのです。ただ、おそらくこれは、あまりにも無駄であり非現実的でしょう。現実的であると思われるのは、裏面約款の内容は、電子式船荷証券のシステムの中又は外(後者は例えば船会社のホームページ)で、電子式船荷証券のシステムそれ自体とは別個に、所持人が自由に閲覧できるような状態にしておくという方法です。そしてさらに、それには論理的には次の二種・さらにはそれらを統合した方式があり得るでしょう。

第一は、電子式船荷証券のシステム中で実際に電子式船荷証券が発行・流通される局面において、当該運送契約は所定の裏面約款に準拠するものであり、その内容は電子式船荷証券のシステムの中又は外で所持人が自由に閲覧できる旨のメッセージを表面記載事項と併せて送受信するという方法です。これは実は、紙の船荷証券でも存在しているケース31です。第二は、さらに進んで、そもそも電子式船荷証券のシステムに参加する契約自体において、同システムの中で各船会社が発行する電子式船荷証券の裏面約款の内容は電子式船荷証券のシステムの中又は外で所持人が自由に閲覧でき、かつ、参加者は(原則的には)それに拘束される旨規定してしまう方法です。データ交換における無駄を省くという点からは、これがいちばん合理的です。ただ、第二の方式の場合、当該契約に、運送人が上記の方法で開示する約款に荷主が拘束される旨あっさり謳われていると、荷主サイドから見れば、たとえ包括的ではあれ、運送人が一方的に作成・開示する運送約款への拘束に文書で合意することになり、やや問題があると言えるかも知れません。紙の船荷証券の場合、所持人は、それを取得して権利を行使するとは言え、その裏面約款に無限定に拘束される旨明示的に約束までしていない(それへの拘束はあくまで黙示的合意と構成される)のに対して、上記ではそれよりさらに歩を進めていることになるからです。

 

Boleroでは、そのRulebook 3.2.(1)において、送信される電子式船荷証券のデータ中に外部の運送約款が摂取されることの明示、並びに、当該約款が閲覧可能な場所の開示を運送人に要求しており、加えて、Rulebook 3.2.(2)では、各当事者ないしユーザー(つまり参加者・実質的には荷主)は、摂取により当該約款が運送契約の一部となることに了解する、運送契約の当事者を拘束するものとなることに合意する、とあっさり謳っており、第一・第二の方式を統合したものと言えます。後段は、上に指摘したとおり若干問題とする余地があるようにも思われます。

 

31 いわゆるショート・フォームの船荷証券と称して、裏面に運送約款の全部が記載されず、運送人の標準的船荷証券の約款に準拠する旨、並びに、当該約款は別途運送人より入手可能なこと等のみが記載されている場合がそれです。

 

 

 

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