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オープン・ネットワークには、それが果たして機能していくかどうかについて多分に問題があ(る)」と指摘29され、その理由については、同じ論文の別の個所で「オープン・システムの場合、関係者間に共通の基盤がないため、ともすれば契約の拘束力が否定されたり或は契約関係に入っていない利害関係人が関わってきたりして、船荷証券的機能を実現できない虞が多分に存する」と述べておられます30。これは極めて簡潔な表現ながら、極めて示唆に富む指摘のように、筆者には思われます。

 

3. その他の問題

 

これ以外にも、船荷証券の電子化にあたり、紙との船荷証券との異同が問題になる点は実に色々あります。ただ、基本的には、それらは、凡そ電子式船荷証券ではどうなってしまうのかという問題ではなく、その法的枠組の構成の仕方の問題、換言すれば、紙の船荷証券における法律関係を電子式船荷証券の法的枠組で再現するにあたりどのように・どこまで規定をすれば良いかというdraftingの問題であることが多いと考えられます。以下では、そのような例のごく一部を取り上げて説明します。

 

3.1 船荷証券約款の適用

 

従来の紙の船荷証券では、通常、その裏面に詳細な運送約款すなわち運送条件の詳細が記載されています。船荷証券の所持人は、その内容に署名をすることはありませんが、一般的には、船荷証券の所持人としての権利を行使する際には、裏面の運送約款の内容にも拘束される(あくまで当該約款で規定された範囲内における権利を取得し行使しているのである)と理解されています。その運送約款にあまりにも運送人に有利過ぎる不当な条項が入りかつそれが拘束力を持つことを防ぐために、Hague Rules、Hague-Visby Rules、Hamburg Rulesという一連の国際条約ならびにそれらに基づく各国の国内立法が存在しているわけです。この船荷証券約款の効力は、電子式船荷証券の場合どのように及ぼされる(べき)でしょうか。

 

29 木村宏「電子式船荷証券に係わる法的考察(第三回)」(雑誌「海運」2000年10月号68頁以下・70頁)

30 木村宏「電子式船荷証券に係わる法的考察(第一回)」(雑誌「海運」2000年8月号66頁以下・69頁)

 

 

 

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