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第二に、実務的問題として、TEDIでは、関係者が船荷証券授受の当事者たり得る者全員といちいち個別に契約を締結する必要があります。1]運送人は、全ての2]荷送人の候補者とつまりは全ての荷主・顧客といちいち締結する必要がありますし、2]荷送人(見方を変えれば輸出者)は、自己が起用する全ての船会社、及び自己が従前で言えば船荷証券を持ち込む全ての金融機関といちいち締結する必要があります。これが非常に煩瑣であるのは想像に難くありません27。これに対しBoleroでは、自分がBoleroを利用すると決めれば、最初に、先に述べた契約を一回締結すればよく、後は、関係者が同様に締結するよう皆を勧誘し、皆揃えば(正確に言えば揃った範囲で)「ヨーイどん」となるのです。

 

2.4 小括

 

TEDI Repository Service Terms and Conditions 1.1の註釈によれば、TEDIが契約の連鎖という方式をとった主たる理由は、TEDIでは複数のRepository Service Providerがあり得るからだと説明されています。確かに、関係者全員の会員契約的な方式をとるBoleroでは、TEDIのRepository Service Provider、Certification Authorityに相当する者が今のところ一つ(全てBolero International Ltd.)に固定されています。しかし、複数のRepository Service Provider、Certification Authorityがあり得るということから、TEDIの如き契約の連鎖という方式が出てくるのは果たして論理必然でしょうか。むしろ、TEDIという大きな枠組が、Boleroにおける諸契約(含むRulebook)的なものを全体として一つの標準契約のPackageとして制定し、その枠組の中で、Repository Service Provider、Certification Authorityたらんと欲する者は皆これを使ってそれぞれ利用者(荷主・金融機関・運送人等)獲得競争をせよ、と言えばたりるのではないでしょうか。

註1で引用した木村宏弁護士の論文では、「船荷証券となり得ない電子上の記載に船荷証券の機能をストレートに付与することはできない。関係当事者間を拘束する契約的手法で一定のシステムを確立し、そのシステムの運用のもとに船荷証券類似機能を創設するという、いわば工夫の産物として対処していくことになる。(中略)船荷証券等価物の機能する環境について、CMI規則28の意図する利用者に限定を加えないオープン・ネットワークを創出する方法と、ボレロの目指している、ユーザー間の契約上の縛りと認証・公証機関としてのボレロの有機的結合関係を創設する方法とがある。

 

26 1.で触れたとおり、現在、TEDIの参加者(実際にはTEDIプロジェクトの関係者)の間で、TEDI Clubなる任意団体が組織されていますが、そのpress releaseによれば、規約の改定もその活動の一としてあげられています。従って、将来TEDI International Agreementの改訂が必要になれば、それはTEDI Clubの機関決定としてなされることになります。これは既に、Boleroの発想に相当近づいています。ただ、このTEDI Clubの機関決定により、各当事者が締結したTEDI International Agreementが当然に改訂される根拠は今のところ詳らかでありません。

27 Repository Service Providerが違えばこれを更にもう一度全部する必要があるという意味でも煩瑣です。ただこれは、Boleroの場合においては、TEDIにおける Repository Service Providerに相当するものがBolero International Ltd.一つしかないということから問題にならないだけで、TEDIの方式特有の問題ではありません。

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