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これはあまりに技巧的すぎないでしょうか。第四に、第三の点とも関連しますが、仮に、5]荷受人が1]運送人に対する権利行使をする以前に、元となる1]運送人と2]荷送人の契約が契約違反による解除25などで失効した場合どうなるのでしょうか。他国はいざ知らず、日本法において第三者が権利を取得するのは、あくまでも当該第三者が債務者に受益の意思表示をした時です。他方、1]2]が契約をした段階では、果たして第三者たる 5]荷受人が誰になるのかは凡そわかりません。それは個別の運送契約毎に代わるからです。(もっと言えば、そもそも第三者は5]荷受人とは決まっていません。途中の3]又は4]が最終のPossessorとして権利行使をすることもあり得る訳だからです。)従って、受益の意思表示は、5]荷受人(正確に言えば3]4]もあり得ます)が実際に1]運送人に対して権利行使をした時点に求めざるを得ません。従って、その前に、1]2]の契約の効力がなくなっていれば、5]の権利行使もできなくなります。これを乗り越えようとすれば、関係者全員が常に第三者になる可能性があるわけですから、TEDI Interchange Agreementを結ぶことで、事前に包括的に受益の意思表示をしているのだとでも解釈するしかありません。しかし、その場合は、逆に受益の意思表示により権利取得を認めてくれる元の「第三者のためにする契約」自体がまだ影も形もないことがあり得るわけで、その解釈は、日本法が第三者のためにする契約の法理で定める受益の意思表示という要件を骨抜きにし、1]2]の契約により凡そその他の関係者全員が権利を取得することを承認するのだという解釈をとることになりはしないでしょうか。

 

2.3.4 TEDIの方式のその他の問題

TEDI Interchange Agreementの契約の連鎖という方式の問題点は他にもあります。かつ、これらの問題は、上に述べた問題よりさらに実質的な問題と思われます。

即ち、第一に、理論的問題点として、たとえ、今提案されているTEDI Interchange Agreementが、叡智を結集した現時点では完璧な標準契約だとしても、将来、実際に運用する中で、その改訂・改善の必要が出てくる可能性は否定できないはずです。その際、利用者の中には、それに賛成する者・そうでない者が必ず出てくるはずです。その結果として、1]2]、2]3]の契約が現行版、3]4]、4]5]が改訂版のとき、1]5]はどっちなのでしょうか。もし、その場合には、強制的に1]2]、2]3]の契約も改訂版に改訂したとするなら、それは既に、Bolero的な会員契約の方式になっていないでしょうか26。そうであれば、なぜそのような「素直」な方式をとらないのでしょうか。

 

25 無論、できるだけそのようなことが起きないよう努力する義務は当事者に課されていますが(TEDI Interchange Agreement 2.3)、明らかな契約違反、例えば守秘義務違反による解除は駄目とは言えないでしょう。

 

 

 

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