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2.3.2 TEDIにおける問題点の解決方法

結論的に言いますと、これは、当初2]が1]に対して有していた運送契約上の権利が債権譲渡されて5]に至り、しかも5]は債務者たる1]に対して当該譲渡を対抗できる(効力を主張し得る)と構成されることで解決されています。即ち、TEDI Interchange Agreement 2.5 (b)(i)/(ii)によれば、TEDI上で船荷証券所持人に相当する権利者であるPossessor(最初のPossessorが2]荷送人)が、新Possessorを指名しRepository Service ProviderにShipment Information Table上のPossessor書換の指示(Registration Instruction)をし、それが実行されることにより、運送契約上の権利が新Possessorに譲渡・承継されると明記され(義務も譲渡・承継される旨規定されていますが、これについての問題点は後述します。)、他方、TEDI Repository Service Terms and Conditions 3.3.3によれば、運送人は、当該Repository Service ProviderをPossessor間の運送契約上の権利譲渡の通知を受領すること等についての代理人と指定しています。前者における現PossessorからRepository Service Providerに対する書換指示は、後者で言うところのPossessor間の運送契約上の権利譲渡の運送人代理人に対する通知と解されますので、それにより債務者たる運送人への対抗力が具備されることになります15

但し、TEDI Interchange Agreementの公式の註釈の説明は、以下に縷々述べるとおり、この点を明快に述べておらず、むしろその説明には混乱があるように思われます。

TEDI Interchange Agreement 3.3の註釈は、1]5]の関係に関して、5]荷受人(TEDI Interchange Agreementでいうところの最終のPossessor)が1]運送人に貨物引渡を請求できる権利をどう基礎付けるかという形で取り上げ、そのために援用が検討されるべき法理として、日本法にいうところの第三者のためにする契約の法理(民法第537条。より一般的に言えば、要するに契約当事者でない第三者に当該契約により権利を取得させることの可否及び可の場合の要件を定める法理です。)を“third party beneficiary”theoryとしてとりあげつつも、それが必ずしも各国共通に認められる訳ではないという問題点を指摘したうえ、しかしながら、この法理の適用が問題になりそうな局面でも、実際には、その適用を待たずして(この法理に依拠せずとも)問題が解決できると論じています。具体的には、1]5]間の関係の場合、みなし承諾及び引受並びに1]運送人の新Possessorに対するattornmentにより、5]荷受人からの貨物引渡請求は可能であり、従って第三者のためにする契約の法理の援用は不要であると説いています。

 

14 前註の説明から明らかなように、これに対して、それでは1]5](あるいは1]3]、1]4])でTEDI Interchange Agreementを締結すれば良いというのは、全然回答になりません。また、念のため言えば、この後の説明で明らかなとおり、TEDI Interchange Agreementの立案者自身も、1]2]、2]3]、3]4]、4]5]の契約で1]5]の契約になるという乱暴な考え方をしている訳ではありません。

15 債権譲渡の対抗力というときは、債務者に対するそれだけではなく、第三者に対するそれも問題になりますが、後者については後註16参照。

 

 

 

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