日本財団 図書館


即ち、TEDIを利用しようとする会社は、まず、その前提として、TEDIの中で行われる個々の電子データ交換において発信者の電子署名に電子認証を与える機関(Certification Authority)との間で、その電子認証サービスにつきTEDI Electronic Signature Service Agreementを締結し、TEDIにおける電子式船荷証券ともいうべきShipment Information Table10を管理する機関、換言すればTEDIというサービスを提供する機関であるRepository Service Providerとの間で、TEDI Repository Service Terms and Conditionsによりそのサービスを利用する旨合意(正確に言えばこれはRepository Service Providerの採用すべき標準約款であり、利用者はこれを規定した契約書そのものにサインする訳ではありませんが)しますが、ここまではBoleroにおけるBIL Operational Service Contractのようなものです11。問題となるのは、肝心の電子式船荷証券の役割・機能あるいはその法律関係についての契約的規律(電子式船荷証券の法的枠組)の具体的中身を定める契約で、TEDIではそれはTEDI Interchange Agreementといわれるものですが、それは、船荷証券情報を直接に電子データ交換しあう二社間12で締結し、その契約が関係者間でどんどん連鎖することにより全体に契約的規律ないし効力を及ぼすという考え方をとっています。具体的に言えば、TEDI Interchange Agreementを1]発行者=運送人たる船会社と2]貨物の輸出者=荷送人、2]と3]輸出国側の買取銀行、3]と4]輸入国側の信用状発行銀行、4]と5]輸入者=荷受人とでそれぞれ締結することで、関係者5名全員がこれに拘束されるというのです13

しかしながら、1]2]、2]3]、3]4]、4]5]と契約があるからといって、1]5]の間に契約関係があることにはなりません。この順番に売買契約や業務請負契約を結んでも1]5]の間で売買契約や業務請負契約が成立するわけではないし、この順番に業務提携契約を結んでも1]5]の間で業務提携契約が成立するわけではありません。他方、既に述べたとおり、船荷証券の流通では、元々の船荷証券の発行による運送契約は1]2]間で締結されたものでしかないのに、最後に1]5]の間で(あるいは1]3]、1]4]の間でも)少なくとも運送契約上の権利についての契約的規律が及んでいなくてはなりません。TEDIはこの点をどう解決しているのでしょうか14

 

10 註4参照。

11 Certification AuthorityもRepository Service Providerも、TEDIというシステムないしネットワーク全体としては何れも一個でなく複数存在することが予定され(これらの語自体は普通名詞です)、Boleroにおいては全てBolero International Ltd.が果たしている機能・役割を、各参加者が契約締結を通じて選択するこれら二種の機関に委ねることになります。

12 TEDIの用語法で言えばShipment Information Tableを創設するCarrierと最初のPossessor間、その後変更される新旧Possessor間等、そのTEDI Interchange Agreement冒頭の註釈の表現を借りれば、trade chainの当事者相互間です。電子データ交換という見地からは、正確には間にRepository Service Providerが介在することになりますが。

13 この場合、1]5]の間ではTEDI Interchange Agreementは締結されないという想定で検討する必要があります。なぜなら、仮に1]5]で偶々締結されていたとしても、その場合今度は、締結していない1]4]において権利行使(4]の1]に対する権利行使)がされる場合を想定して検討する必要が出てくるからです。換言すれば、先に本文で触れた1]2]3]4]5]1]という船荷証券流通の想定は単なる典型の想定であり、理論的には、運送人としては、転転流通する船荷証券のどの所持人から最終所持人として権利行使されるかわからないのですから、検討は、常に、運送人とTEDI Interchange Agreementを締結されていない者からの権利行使もあり得るという想定でなければならないのです。これを避けるには、運送人だけは全員と締結する必要があることになりますが、これは煩瑣に堪えませんし、TEDI Interchange Agreementの公式の註釈が、前註で述べたようにtrade chainの当事者相互間と述べていること、本文で後に述べるように第三者のためにする契約を云々していることから見て、立案者自身それを想定しているとは思えません。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION