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筆者がこれを巧妙とも述べた理由は、第一に、単に、Bolero Association Ltd.との間でBAL Service Contractを締結しそこでBolero Rulebookへの拘束に同意するとしただけでは、会員制組織の入会契約のように、あくまでもBolero Association Ltd.(会員制組織)と利用者(会員)の契約関係ができるだけで、会員相互間の契約関係が成立しないため、前者は後者以外の現在及び将来の全会員との関係で後者の代理人にもなるとの条項7を挿入することで、利用者相互間の契約関係としてもBolero Rulebookへの拘束を実現していること、第二に、実際に運営する機関であるBolero International Ltd.と利用者の会員組織であるBolero Association Ltd.を別立てとし、Bolero Rulebookの改正その他を後者の権限(正確にはその所定の機関決定を要しますが)とすることで、実際にBoleroを運営するBolero International Ltd.は当然その出資者(TT Club及びSWIFT等)のものである一方、法的枠組たるRulebookや利用者資格の得喪については、会員全体による最終的コントロールに服するという中立性(あるいは少なくとも中立らしさ)を実現しているからです8。もっとも、第一の点については、実質的に双方代理になるのではないかという問題がありますが、元々双方代理は、当事者がそれに同意していれば、敢えて違法無効というものではないと考えられ、さらにその同意は黙示的にも認定可能ではないかと思われますので、決定的な欠陥とは言い難いように思われます。

無論、一旦Boleroにおける電子式船荷証券(Bolero B/L)が出された後それによる権利を上記のような契約を結んでいないアウトサイダーに譲渡したいという時には困りますが、これは契約的規律が及ばない云々以前に、元々システム的にも無理な話であってやむを得ないことです。ビジネスの参加者が皆ファックスを持っていてファックスにより情報交換や取引をしているとすれば、ファックスマシンを持っていない人にはファックスが送れないから情報交換も取引もできないというのと同じです。できるだけ皆にファックスマシンを買ってもらうしかないのです9

 

2.3 TEDIの場合―「契約の連鎖」による方式

 

2.3.1 TEDIの方式及びその問題点の所在

これに対し、TEDIは全く異なる方式をとっています。

 

7 BAL Service Contract Clause 3 (Appointment as Agent)

8 具体的にはBAL Service Contract Appendix 1 Bolero Disciplinary Procedure及びBAL Service Contract Appendix 2 Bolero Rulebook Amendment Processによります。

9 尤も、ファックスマシンがない者とどうしても情報交換や取引をしたい時には手紙ですることもあり得るように、電子式船荷証券の利用を途中でやめて紙の船荷証券を出したいということもあり得ますから、実際にはそのための方策も電子式船荷証券の法的枠組の中で講じる必要があり、現にBoleroでもそうなっています(いわゆるSwitch to Paper、Bolero Rulebook 3.7)。これにはこれで困難な問題がありますが、本稿では触れません。

 

 

 

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