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2. 電子式船荷証券に関する契約の方式ないし当事者―その法的枠組構成の方式

 

2.1 緒言

 

論理的に最初に問題となるのは、おそらく、電子式船荷証券授受の当事者間における契約的規律(法的枠組)を、誰と誰との契約として構成していくかです。

電子式船荷証券が、船荷証券と同様に、1]発行者=運送人たる船会社、所持人たる荷主(これはさらに典型的には2]貨物の輸出者=荷送人及び5]輸入者=荷受人に分かれます)及び同じく金融機関(同様に3]輸出国側の買取銀行及び4]輸入国側の信用状発行銀行に分かれます)という多数当事者間において世界的に流通し、それら当事者間で法律関係を発生・変更・消滅させていくことが予定される以上、その法律関係を規律するところの法的枠組は、それら当事者全員さらにそれに加えて電子式船荷証券のシステム5の運営者の間で全て同一になっている必要があるでしょう。

もう少し具体的に検討しますと、上記当事者間(典型的には上記1]〜5]の各当事者がこの順に登場します)の法律関係は、比喩的に言えば、単純なマトリクス的なものではなく、扇を広げるような形で発生・展開するものであり、扇の要の位置に1]運送人=発行者が位置すると言えます。というのは、まず1]発行者=運送人たる船会社が2]貨物の輸出者=荷送人に船荷証券を発行することにより両社間の法律関係ができますが、これは運送契約という基本的な権利義務関係を設定するものであり、その後当該船荷証券が2]貨物の輸出者=荷送人、3]輸出国側の買取銀行、4]輸入国側の信用状発行銀行、5]輸入者=荷受人と順次転転流通していく過程は、端的に言えば、最初に1]2]間で作られた運送契約上の権利を移転していく(義務も移転していくかどうか、また運送対象貨物についての物権や間接占有も移転していくかどうかも問題ですが、それらは後に触れます)過程であり、そして最後に、船荷証券の最終所持人である 5]輸入者=荷受人が船荷証券を呈示することは、元々の運送契約の当事者でない5]と1]の間に法律関係ができることであるからです。

 

3 TEDIについては、http://www.tediclub.com参照。

4 TEDIについては、その法的枠組を決定する基本的契約であるTEDI Interchange Agreement 2.4の公式の註釈(これは前註のURLにて参照できる同Agreementのwith Annotationの版におけるAnnotationのことを指します。以下全て同じ。)において、TEDIにおけるShipment Information Tableは電子式船荷証券ではないとわざわざ述べていますが、他方、TEDI運用ガイドラインの3.2.4.(1)では、TEDIのアプローチは、「電子式船荷証券」が許容されないという現状に鑑み、電子的手段により「船荷証券の機能代替」を合意によって実現するという基本姿勢である旨説明されており、結局は、「電子式」船荷証券は法的には船荷証券ではないという当たり前のことを述べているに過ぎないように感じられます。その意味で、TEDIも(本文冒頭に述べたような意味での)「電子式船荷証券」の検討においては当然対象とされるべきものです。

5 本稿においては、適宜文脈に応じて、「電子式船荷証券」「電子式船荷証券のシステム」という言い方をしていますが、後者は、本稿冒頭で述べた見地からは、電子式船荷証券は、結局はその実現のために設計・採用されたコンピュータ・システム及びネットワークの中でのみ存在するものであるという観点から、そのようなコンピュータ・システム及びネットワークの総体を指す趣旨で述べています。

 

 

 

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